■ヤンキー×陽キャのハイブリッドという新機軸

 暴走族をテーマにした不良漫画の基本形が1982年連載スタートの『湘南爆走族』(吉田聡)だとするならば、同じく湘南を舞台にその発展形として時代に合わせて登場したのが『週刊少年マガジン』で1994年~97年に連載された『湘南純愛組!』(藤沢とおる)だろう。

「鬼の英吉」こと鬼塚英吉と「爆弾龍二」こと弾間龍二の湘南最強「鬼爆コンビ」がヤンキーから足を洗いパンピー(一般人)になるために退学し童貞を捨てるためにリゾートバイトへ、という導入は不良漫画としては変化球だが、その後も辻堂高校に転入してケンカに明け暮れる毎日と並行して、いかにして童貞を卒業するかというナンパ路線が強調され、湘南の空気感も相まって今で言う「陽キャ」っぽい雰囲気も漂う。他の不良漫画とは一線を画した、名実ともに90年代を代表するカラッと明るいテイストが特徴だ。

 鬼塚は不真面目でちゃらんぽらん、単純かつスケベだが決めるときはビシッと決める性格、一方の龍二は裕福な家で育ったが厄介者として放逐された過去があり鬱屈した感情を抱えつつも一本気な性格と、やはり対照的。また、鬼塚が金髪で龍二が黒髪と『今日から俺は!!』と共通点があるビジュアルとなっているのが面白い。

 続編として、大学を卒業し教師となった鬼塚を主役にした『GTO』(グレートティーチャーオニヅカの略)があり、反町隆史主演でドラマ化されお茶の間でも人気となったため、一般的にはこちらのほうが有名かもしれない。ちなみに2人の中学時代を描いた前日譚『BAD COMPANY』や、龍二が主人公の番外編『GT-R』も存在する。

■不良漫画は「強さ」と「カッコよさ」を学ぶ教科書!

 こうした不良漫画は、かつてはわずかな例外を除いては基本的に若年層の男性読者をターゲットにしていたが、近年は『クローズ』や『今日から俺は!!』、そして『東京リベンジャーズ』など不良漫画を原作とする実写映画が大ヒットすることも増え、それに伴って女性のファンを多数獲得するようになったのは興味深い傾向だ。キャラの立った個性的な中心人物や、それを取り巻く濃密な関係性の魅力がより広く受け入れられるようになったともいえる。時代とともに見た目は変化していくが、「強さ」とは何か、「カッコいい」とはどういうことかを追い求め続ける不良漫画の本質はけして変わることはないだろう。

 今回紹介した作品に匹敵するような魅力的な「最強コンビ」が登場する不良漫画はまだまだたくさんあるので、自分だけの推しコンビを探してどっぷりと不良漫画の世界に浸ってみてはいかがだろうか。

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