■不良漫画史に燦然と輝く黄金コンビ

 まず最初に挙げておきたいのは、きうちかずひろ氏による不良漫画の金字塔『ビー・バップ・ハイスクール』だ。

 1983年から20年にわたり『週刊ヤングマガジン』で連載された同作は、実写映画、ドラマ、Vシネ、アニメ、ゲームなどさまざまなメディアミックスも果たした大ヒット作。そのヒットぶりは社会現象レベルで、講談社の漫画作品としてはのちに『進撃の巨人』に抜かれるまで初版発行部数の記録を持っていたほど。1985年~88年にかけて6作品が製作された実写映画シリーズではトオルこと中間徹を仲村トオルが、ヒロシこと加藤浩志を清水宏次朗が演じた。

 キャラクターとしては、トオルがどちらかといえば硬派で直情径行なのに対して、ヒロシは軽薄で口が上手く女好き。ケンカの強さは互角だが、トオルがその性格通り強敵にも真正面から正攻法で向かっていくのを好むのに対して、ヒロシは口の上手さを活かした駆け引きや時にひきょうな手を使うこともいとわないスタイルで、やはり対照的。ともにプロレス技をケンカに使うことが多いのは、まだゴールデンタイムにプロレス放送があった時代の影響を強く感じさせる。

 この頃はまだ「ヤンキー」ではなく「ツッパリ」と呼ばれていた時代でもあり、髪型は2人ともリーゼント、学ランはトオルが長ランでヒロシが短ランにズボンはボンタンと、今からするとオールドタイプの不良だが、当時中高生でちょっと「ワル」かった読者たちはこぞってトオルとヒロシのファッションを真似したものだった。

 また、他校との抗争などのケンカシーンだけでなく、トオルとヒロシたちが校舎の屋上などでダベっている描写など日常シーンも多く、その等身大の不良像は以後の作品にも多大な影響を与えており、まさに不良漫画の歴史に残る傑作だったといえるだろう。

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