■死を受け入れた男の言葉
元霊界探偵だった仙水忍と幽助の戦いは、これまでにない苦戦を強いられる。仙水は幻海すら持ちえなかった究極の闘気「聖光気」を有し、S級クラスの妖怪に匹敵する“気”を所持していた。
仙水はその圧倒的なパワーで幽助の左胸部をうがち殺害。幽助の死に憤る蔵馬は妖狐と化し、飛影も邪王炎殺黒龍波を放つ。そして倒れた幽助を見つめる桑原は、心の中でこうつぶやいた。
「浦飯…すぐ後からいくかもしんねーけどよ」「ハデにやられてみせるぜ、胸はってあえるようにな……!!」。
このときの桑原は、勝ち目がないと知りながらも仙水に向かっていく蔵馬と飛影の背中を見て、自分も死を受け入れたうえで「胸はって(幽助に)あえるように」の部分を重要視しているようにも感じられ、仲間への尊敬の念や男としての意地のような部分も見え隠れする1シーンに思えた。
リーゼントにいかつい顔の桑原は、容姿で女性ファンからもてはやされるキャラではなく、かと言って圧倒的な強さで無双するようなキャラクターでもない。しかし、最初は少々霊感が強いだけの普通の人間が、魔界を代表する妖怪たちと同列に並んで戦えるまで成長を遂げたのは、まさに驚異としか言いようがない。
そんな彼の言動や性格、生き様をあらためて振り返ってみると、ある意味では主人公よりも主人公らしく、決めるときは決める男なのがたまらなく魅力的に映る。ビジュアル的には蔵馬や飛影のほうが人気かもしれないが、同作のファンで桑原和真という男のことが嫌いな人はほとんどいないのではないだろうか。