■ニュータイプ専用機に挑んだ「名も無きエース」

 最後に紹介したいのは、OVA『機動戦士ガンダムUC』に登場したすさまじい戦闘シーンだ。こちらは2010年代にリリースされた比較的新しい作品で、再編集版がテレビ放送もされているのでご存知の方も多いのではないだろうか。

 そのOVAの「エピソード1」で“袖付き”と呼ばれるネオ・ジオン残党軍が誇るニュータイプ専用機「クシャトリヤ」が出撃する。パイロットは強化人間のマリーダ・クルスだ。

 一方、このクシャトリヤに対するのは、ロンド・ベル隊に所属するジェガンタイプ3機からなる編隊。最初にクシャトリヤの遠距離からのファンネル攻撃を受け、一瞬のうちにジェガンD型の2機が撃墜されてしまう。

 しかし、残されたスターク・ジェガンに乗るパイロットは、この絶望的な状況にも怯まない。即座にクシャトリヤに向けてバズーカで反撃の一撃を放つと、すぐさま肩部のミサイルを発射。拡散弾により厄介なファンネルの動きを牽制する。

 これを撃ち切るとスターク・ジェガンは両肩のミサイルユニットをパージ。機体を軽量化させて機動力を上げ、猛スピードでクシャトリヤに急接近。両者ともにサーベルを交錯させ、互角の近接戦闘を展開した。

 さらにスターク・ジェガンのパイロットは月光を背にしながら、目くらまし効果も加味しての刺突攻撃を敢行。しかし、目前でクシャトリヤのスラスター噴射を受けて突進が阻まれると、その隙をつかれてコクピットごとサーベルで両断されてしまった。

 最後にスターク・ジェガンのパイロットの「袖付きめ!」という残留思念のような声が聞こえるが、その声を聞くかぎり「熟練のエースパイロットだったのでは?」と妄想が膨らむ1シーンだった。

 強化人間が乗るニュータイプ専用機を相手にしながら、名前も出てこないパイロットがジェガンで紙一重の戦いを展開した胸アツの戦闘シーン。クシャトリヤが回転しながら飛び立つ場面や、マリーダのヘルメットにコクピットモニターの光が反射する描写など、わずかな戦闘シーンの中に秀逸な映像表現がいくつも散りばめられていた。

 もちろんテレビシリーズや劇場版の作品には、しびれるような戦闘シーンがたくさんあるが、古めのOVA作品にもガンダム好きなら何度も見たくなるような素晴らしい戦闘映像が存在する。今はいろいろな動画配信サイトで過去のガンダム作品を見ることができるので、昔のOVAなどは未視聴という方は一度はチェックしてみるのはいかがだろうか。

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