今年で生誕50周年を迎えた『仮面ライダー』シリーズ。現在放送中の『仮面ライダーセイバー』では、第23章から「プリミティブドラゴン」という新フォームが登場し、波乱の展開が描かれたが、多彩なフォームにチェンジする仮面ライダーシリーズにおいて、この「暴走フォーム」に注目するファンは多いのではないだろうか。
2010年放送の『仮面ライダーW』に登場したファングジョーカーというフォームは、力を制御できず暴走してしまい、危うく人質を殺しかけたことがある。多くの人はこれらを「暴走を克服して真の能力を発揮する」というヒーローものの王道パターンのひとつだと見るだろう。『セイバー』の場合も、第27章で暴走を克服し「エレメンタルプリミティブドラゴン」へのパワーアップを遂げることに成功した。
しかし、仮面ライダーシリーズには、主人公が最後まで力を抑えることができず、敵や味方たちに恐怖を与え、視聴者をも戦慄させた暴走フォームが数多く存在する。「暴走」の方向性も各作品ごとにバリエーションが違うが、どれも実に恐ろしく、それぞれの作品を語る上で欠かせないフォームとなっている。
■使用者の五感が失われていく…
まず2010~11年に放送された『仮面ライダーOOO(オーズ)』の最終フォーム「プトティラコンボ」。本来、オーズは「オーメダル」と呼ばれる頭、腕部、脚部にそれぞれ対応したメダルを状況に合わせてベルトに装着して変身するが、プトティラは主人公・火野映司が危機に陥ることで3枚の恐竜メダルが勝手にベルトにはまり、強制的に変身させられるフォーム。
変身時にはすさまじい冷気を放ち、恐竜のような咆哮をあげる。このメダルの「欲望を無に返す力」により、それまで「命の源のコアメダルは決して壊れず不死身」とされていた敵怪人・グリードたちのコアメダルを破壊できるようになり、終盤に向けて幹部の退場が続いた。
だが、この能力の最大のリスクは徐々に使用者の肉体がグリード化してしまうこと。味覚が消え、視覚や聴覚にもノイズが交じり、五感が失われていくのだ。使ううちに「力を受け入れて使いこなせるようになる」ということはなく、最後まで能力に折り合いをつけることも、完全な制御もできず、最終的に恐竜メダルはとある事情により消滅した。