7月23日に東京オリンピックがいよいよ開幕。同日行われた開会式では、各国の選手入場の際に懐かしのゲームミュージックが使用されたことが話題を集めたが、オリンピック×ゲームとしてコナミのアーケードゲーム『ハイパーオリンピック』の曲が流れないか期待した人も少なくなかったのではないだろうか。
同作は1983年10月にアーケード用にリリースされた「オリンピック」を題材としたスポーツゲーム。その後、1985年6月にファミコン用に移植され人気を集めたが、アーケード時代の同作は「筐体破壊ゲーム」としても有名だった。
100メートル競走、走り幅跳び、やり投げ、110メートルハードル、ハンマー投げ、走り高跳びの全6種目を競う内容(ファミコン版では全4種目)で、操作は「RUN」と「JUMP」が割り当てられた2つのボタンを押すというシンプルなもの。
クリア自体はそれほど難しくはなかったが、プレイヤーが選手を走らせるには「RUN」ボタンを連打しなければならなかった。それもなまはんかな連打では、とてもオリンピック出場選手とは思えないダメダメな記録しか出せない。とにかく指と手首と前腕の筋力をフル活用して連打、連打、連打、連打、連打! そのため『ハイパーオリンピック』を収録した筐体のボタンが、交換から短期間のうちに破壊されてしまうという事態が全国のゲーセンで発生したのだった。
■憧れのカール・ルイスになれた『ハイパーオリンピック』
1983年当時、陸上短距離でセンセーショナルを巻き起こしたのはアメリカのカール・ルイスだった。
両親も兄も妹もアスリートというスポーツ一家に生まれたアラバマの青年・ルイスは、1936年ベルリンオリンピックで大活躍を見せたジェシー・オーエンスの再来と見なされた。その期待に応えるように、ルイスは1984年ロサンゼルスオリンピックで出場した4種目すべてにおいて金メダルを獲得する。これは世界スポーツ史に残る偉業だ。
『ハイパーオリンピック』は、ちょうどその頃にゲーセンをにぎわしたタイトルである。
筐体にコインを投入し、まず最初に行う種目は「100m走」。これは「RUN」ボタンの連打のみの操作で、標準記録14’00秒の壁を突破できれば次の種目へ進むことができる。なお、このゲームの基本ルールはそれぞれの種目に定められた標準記録を超えられないと、その時点でゲームオーバー。か、過酷だ……。
もっとも、最初の100m走はそこまで難しいものではない。今回はアーケードアーカイブスとしてNintendo Switchで配信されている『TRACk&FIELD』を久々にプレイした筆者だが、どうにか11’30秒を切るぐらいまで連打できるようになった。それにしたってオリンピックで走るにはかなり遅いんじゃねぇか? というツッコミはさておき。
100m走を終えたら、「走り幅跳び」が待っている。ここから急に難しくなる。「RUN」ボタン連打で走って、踏切板を越えない位置で「JUMP」ボタンを押し、さらに跳躍角度をボタン長押しで決定する。標準記録は6m50。が、踏切板の手前で飛んでしまうと5mすら飛べるか飛べないかというところで落ちてしまう。ちなみに、1983年のヘルシンキ世界陸上でカール・ルイスが出した記録は8m55。世界の壁は高い! 高すぎる!