■定規で「人類の夢」を実現

 こうした「連打の苦労」は80年代の先人たちも同様に抱えていた。

『ハイパーオリンピック』がゲーセンで稼働していた時代、少しでもいい記録を出そうとしてさまざまな連打法が編み出された。有名なのはコインを使う方法だ。指では怪我をしてしまうということで、コインを立てて「RUN」ボタンをこするようにガリガリガリガリガリ……って、これは立派な器物破損行為にも思えるが、当時のゲーセンで流行っていた連打法だ。

 また、プラスチック製やステンレス製の定規の弾力を生かしてバチバチと叩く手法もあった。ボタンに定規を押しつけ、弾いて振動させることで連打をするこの方法。うまくやれば100m走で9秒台どころか、7秒台も夢ではなかった。人類の夢、100m走9秒台突破を1本の定規がかなえてくれたのだ。が、そんなことをやっていると筐体のボタンはまたたく間に悲鳴を上げる。『ハイパーオリンピック』を稼働させていたゲーセンのスタッフは、さぞかし頭を抱えていたはずだ。

 こうしてゲーセンの子どもたちを熱狂させた『ハイパーオリンピック』。1984年にはロサンゼルスオリンピックの開催にあわせて続編もリリースされ、「水泳100m自由形」「クレー射撃」「跳馬」などといった7競技がプレイできた。

 金メダルラッシュで盛り上がりを見せている東京オリンピックだが、応援の間に久々に同作をプレイして腕の筋肉痛を味わってみるのはいかがだろうか。

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