■戦況を一変させた「驚異の射撃」
そして映像作品としてアムロの最後の戦いが描かれた映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』にも、パイロットとしてのすごさが分かるシーンがたくさんある。
リ・ガズィでヤクト・ドーガとサザビーを同時に相手にした場面、νガンダムでバク宙しながらマウントしたままのニュー・ハイパー・バズーカを発射した場面、バズーカを投げ捨てるフェイントでギュネイ・ガスのヤクト・ドーガをあっさり撃破した場面、そして宿敵シャアの乗るサザビーを文字通りボコボコにした場面など、アムロの強さが際立つ場面はいろいろ思い浮かぶ。
そんな中、個人的にすごく印象に残っているのが物語序盤のシーン。月にあるアナハイム社の工場にνガンダムを受け取りに行ったアムロは、そこでロンド・ベルの艦隊にネオ・ジオンの攻撃が迫っていることを知らされる。
アムロは機体の最終調整を切り上げ、急ぎνガンダムに乗ってロンド・ベルのもとに出発。アナハイムの技術者からは「間に合いはしません」と言われるほどの絶望的なタイミングだった。
この攻撃でネオ・ジオンのモビルスーツ隊を率いていたレズン・シュナイダーは、ロンド・ベルのケーラ・スゥが乗るジェガンを圧倒。まさにレズンがケーラの機体を撃墜しようとした瞬間、それをさえぎるように遠方から謎の攻撃が飛来する。
この高出力ビームを見たレズンは「援護の艦隊か!」とロンド・ベルの別働艦隊による援軍が来たと判断し、モビルスーツ隊を後退させたが、実はこれはアムロのνガンダムが遠距離から放ったビーム・ライフルによる攻撃。
つまりアムロはレズンを勘違いさせるほどの遠距離から高威力のビーム・ライフルを発射。それも味方のケーラ機に当てないような、とんでもない精度で撃ったことになる。
間一髪のところで部下のケーラを助け、しかもロンド・ベル艦隊の窮地も救ったアムロの恐ろしく精密な射撃。物語全体から見ると地味な場面かもしれないが、個人的にはアムロの卓越した技量をまざまざと感じる1シーンだった。
ガンダムシリーズの作品には、アムロ以外にもさまざまなエースパイロットが登場するので、ファンそれぞれが思う“最強パイロット”がいるはず。とくに初視聴時に衝撃を受けたとっておきの戦闘シーンを定期的に見たくなるのは「ガンダム好きのさが」というヤツなのかもしれない。