■「あの時本気で全国制覇を信じた奴だけだぜ」

 全国大会出場を決めた湘北は、1回戦で大阪の強豪・豊玉高を相手に勝利。しかし、二回戦の相手は日本高校界の頂点に君臨する山王工業だった。

 事前に山王の試合映像を見た湘北の選手たちは、あまりの強さに衝撃を受ける。1年前、山王は海南に圧勝しており、そのときのスタメン3人は今回のインターハイにも出場していることが分かると、初心者の花道を除いた湘北の選手たちはけおされ、意気消沈する。

 気分転換に夜風に当たっていた木暮は、動揺が隠せない赤木と三井に「こうなったら信じようぜ、勝てるさ絶対」「入部したときを思い出してみろよ」と切り出す。

 続けて「今まで残ったのはあの時本気で全国制覇を信じた奴だけだぜ」と語り、木暮たち3年生が湘北バスケ部に入部した当時8人いた同級生の中で、残っているのは全国制覇を目指した自分たち3人だけだと励ましたのである。

 この木暮の言葉は同級生の赤木や三井だけでなく、陰で花道や宮城リョータらも聞いており、山王の強さにのまれていた面々を勇気づけたことだろう。

 赤木や三井までもがビビっていた状況で、唯一前向きな言葉をかけられたのが木暮であり、彼の芯の強さをあらためて感じたシーンでもあった。

 このほかにも、一時バスケを辞めて荒れていた三井寿にかけた言葉なども木暮の名シーンとして有名だ。とがったキャラクターが多い湘北バスケ部において、木暮はスター性のある選手ではないかもしれないが、チームにとって必要不可欠な存在だったのは疑いようがない。華々しいプレーで魅せる選手はもちろん素晴らしいが、縁の下でチームを支え続けた木暮のような誠実な男の言葉にこそ、心が引きつけられる。

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