■相手投手の煩悩まで払う不思議な打法!

 次に紹介するのは、鈴木信也氏の『Mr.FULLSWING(ミスターフルスイング)』(集英社)に登場した必殺打法。同作は2006年まで『週刊少年ジャンプ』に連載されたが、昭和の野球漫画に負けないくらい“魔球”や“必殺打法”が登場する作品として知られる。

 中でも衝撃だったのは、主人公・猿野天国の先輩・蛇神尊の必殺打法だ。蛇神はチームの主軸の一人で、ふだんは冷静沈着でまじめな人物だが、その個性的すぎる打法は強烈なインパクトを残した。

 寺の息子である蛇神は、「毘沙門の構え」という独特の打撃フォームから繰り出す広角打法が持ち味。糸目キャラの蛇神が目を見開き、「六道眼(りくどうがん)」の能力を発動させると、相手のボールが停止して見える……と言われるほどの驚異の集中力を発揮する。

 そして、それを発展させた蛇神の必殺打法が「六道眼・明王憤怒」だ。これは蛇神の体に直接梵字を書きこむことで、五感が極限まで研ぎ澄まされるというもの。さらにバッティングと同時に相手投手の煩悩(作中では怨霊も払った)を払うという、理解不能な副次効果まで生み出す。

 同作には、ほかにもハチャメチャな必殺打法が多数登場するが、この「六道眼・明王憤怒」はもっとも意味不明な打法ながらも「とにかくすごいんだ……」と思わされる謎の迫力があり、なぜか忘れることのできない必殺打法の1つだ。

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