野球にサッカーはもちろん、ボクシングにテニスにゴルフにF1などなど、ファミコン時代にはあらゆるスポーツのゲームが生まれたが、1987年にテクモから発売となった相撲ゲーム『つっぱり大相撲』もかなりの良作だった。
ひとりの力士として、本場所15日間を勝ちぬいて番付を上げていき、最終的に横綱を目指すというこのゲーム。1987年はまだ若貴ブームよりも前で、ほとんどの子どもたちにとっては相撲の楽しみ方が分からなかった時代だと思うが、相手の攻撃にあわせてこちらの攻め方を変えたり、ド派手な決まり手の演出などがあったりと格闘ゲーム的要素があり、意外と相撲の面白さが詰まりまくっていた作品だったと思う。
最近の大相撲では、夏場所で照ノ富士が2場所連続の優勝を果たしたことが話題となった。照ノ富士の相撲人生は、まさに「激動」という文字に表される。大関に昇進し、綱取りまであと少しというところで怪我と病気に泣かされ、序二段にまで番付が降格。そこから再び大関まで返り咲き、見事4度目の優勝を飾ったのだ。
その一方で、相撲協会の定めた新型コロナ感染防止ガイドラインに違反したとして、6月11日に大関朝乃山に6場所の出場停止処分が下った。朝乃山は今後、幕下以下まで番付を落とすものと見られている。
そこから這い上がることが、いかに難しいかを『つっぱり大相撲』で痛いほど知っている。そもそも大相撲の「平均より勝ち星の多い力士が出世する」というシステムは、きわめて過酷なもの。このゲームでは番付の降格こそなかったが、この出世の難しさのバランスが絶妙だった。