■「すまんがみんなの命をくれ」

 最後に紹介したいのは、以前本サイトが実施した「理想的な上司キャラランキング」でも2位に選ばれた、ブライト・ノアのセリフ。

 ブライトといえば、『機動戦士ガンダム』では成り行きとはいえ10代でホワイトベースの艦長を任された人物。アムロ・レイがガンダムへの搭乗を拒否したとき、ブライトはアムロの顔面を殴り「殴られもせずに一人前になった奴がどこにいるものか!」と言い放ったシーンは有名だ。

 あの頃のブライトはまだ経験も浅く、重責を全うするために必死な若い軍人という印象だったが、その後年齢を重ね、さまざまな経験を積んだブライトは、人格的にも立派な軍人へと成長を遂げていく。

 映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』では、独立新興部隊「ロンド・ベル」の旗艦ラー・カイラムの艦長と艦隊司令を兼任したブライト。その劇中で、シャア・アズナブル率いるネオ・ジオンによる「アクシズ落とし」を阻止する作戦をクルーに告げると、最後にブライトは「すまんがみんなの命をくれ」という言葉を続けた。

 部下の気持ちを配慮せず、すぐに手が出ていた頃のブライトなら誰もついていきそうにない、とても重いセリフだが、このときラー・カイラムのクルーたちは全員が無言の敬礼でブライトの言葉に応える。

 ブライトが指揮官として単に優秀というだけでなく、ときには自ら陣頭に立って作戦を実行するような人物だからこそ、部下から絶大な信頼を得たに違いない。

『ガンダム』作品には素晴らしい上官だけじゃなく、正反対の“ダメ上官”もたくさん登場する。だからこそ、このような優れた人物の名ゼリフが輝くと同時に、より物語に奥行きやリアリティが感じられ、大人になってからも作品に共感させられるのかもしれない。

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