■時代は「V」から「WM」へ
1936年のベルリンオリンピックで、サッカー日本代表は優勝候補だったスウェーデン代表に逆転勝利を収めた。
これは現代でも「ベルリンの奇跡」として語り継がれているが、このときの日本代表監督だった鈴木重義はヨーロッパの近代サッカーを目の当たりにして、急遽日本代表のフォーメーションを変更したことで知られている。
鈴木が見たのは「3-2-5」の「WMフォーメーション」だった。W字型に並んでいるのがFW、M字型がMFとDFである。Wが「矛」、Mが「盾」という編成だ。これを採用した日本代表はスウェーデン代表に対して劇的な勝利を演出するのだが、この時代のMFはあくまでも守備要因で、攻撃に出ることはほとんどなかった。
WMフォーメーションは、第二次世界大戦後においてもその威力を発揮したが、1958年のワールドカップでブラジル代表が優勝して以降は一気に旧式化してしまった。ブラジル代表が採用していたのは「4-2-4」フォーメーションである。この編成の中には、まだ未成年だったペレもいた。
これ以降のサッカーはMFの役割が広がると同時に、FWの人数が徐々に減っていった。
■20世紀サッカーに19世紀サッカーの底力を見せてやれ!
ところがスーパーフォーメーションサッカーでは、3人制オフサイド時代のVフォーメーションと、ペレ全盛期の「4-2-4」が同居するという恐ろしい設定。いや、それどころかスーパーフォーメーションサッカーには「4-4-2」や「4-3-3」もあるから、これは各時代のサッカー同士の対決と言っても過言ではない。
そんなので勝負になるのか? という素朴な疑問も出てくるだろう。心配はいらない。実はこの『スーパーフォーメーションサッカー』にはオフサイドそのものが実装されていないうえ、かなり悪質なタックルやを敢行してもあまりファールを取られないようにできていたのだ。後ろからスライディングをしても審判は止めない。
ひと言で言えば、前近代のフットボールだ。ラグビーとサッカーの間に明確な基準がなかった時代のフットボール、と言えばより適格かもしれない。
だからDFとMFはひたすら前方にボールを飛ばし、FWがタックルを繰り出しつつボールを強奪して相手ゴールに叩き込む、という戦術も立派に成立する。
ただ、ごくごくたまにファールを取られることがあり、そうなったらレッドカードで一発退場。なんとこのゲーム、イエローカードという概念が存在しないのだ(93年発売の『2』からはイエローカードが登場)。が、それと引き換えにファールされた側も負傷して退場するため、あたかもイタリア・フィレンツェのカルチョ・ストリコのような試合展開になることも。
ほぼほぼ喧嘩のようなサッカーだが、それゆえに友だちとの対戦プレイは大いに盛り上がった。多彩なフォーメーションで相手を潰すこともできる『スーパーフォーメーションサッカー』は、今後も語り継がれるべき名作ソフトである。