■「友情と恋愛」の違いについて
また第8話「恋愛的友情」では、論じるのが非常に難しいはずの「友情と恋愛の違い」について、森依のセリフを通して吉野朔実さんの考えがわずか5コマで書かれた。
「恋愛はあらゆる抵抗に打ち勝つ相思相愛の力」
「友情は相思相愛でありながら、抵抗によって達成出来ない疑似恋愛関係」
“抵抗”というのは「同性である」「既婚者である」「恋人がいる」「顔は好みだが性格が気に入らない」「性格はいいが肉体的に受けつけない」などといったもののことで、森依いわく「逆を言えば抵抗があるにもかかわらず、気持ちのベクトルが向き合っている人間関係」が友情で、友情は恋愛の一部なのだという。(『恋愛的瞬間』第8話「恋愛的友情」より)
好意のベクトルが向き合っている友情関係。見方をかえれば、抵抗を克服できれば、友情も恋愛に発展しうるのだ。「そうでもないものを私は友情とは呼ばない」と森依は最後に主張するのだった。
第8話はハルタの高校時代の同級生とのエピソードを描いた話。これらのセリフは物語冒頭に出てくる前フリのようなものだが、サラリと密度の濃い名言が飛び出てくるのが『恋愛的瞬間』という漫画だ。
恋愛は人生のテーマの一つである。ゆえに、恋愛に悩むのは当然のこと。肉体を投げ出して他人の男を寝取る女性、不倫男とその愛人たち、誘拐犯に好意をもってしまった女性などなど、吉野朔実さんの漫画にはさまざまな恋愛と、彼らが抱える複雑な悩みが描かれている。恋愛に何かしら悩んでいるすべての人へ。ぜひこの機会に、漫画家・吉野朔実さんの名作に触れてみませんか。