■ペットよりPETが欲しかった…。エグゼの思い出
舞台はIT産業が急激に発達している未来の世界で、人々は「PET」という携帯端末の中にいる擬似人格型プログラム「ネットナビ」を介し、日常生活のほとんどをこなすことができるとても便利な時代になっているという設定です。
そんな世界となるとネット犯罪が社会問題化し、各地のネットワークでウイルスやネットテロ犯罪が頻発していました。小学5年生の主人公・光熱斗は、ネットナビの生みの親でもある父親・祐一朗からもらったネットナビ「ロックマン」とともにこうした問題に対峙していく、という物語となっています。
当時の僕は熱斗くんよりも少し年上でしたが、家にパソコンもなければ携帯も持っていなかったのでネットの知識はほぼ皆無で、ネットに関する話をされても「ネットって便利なんだなあ」ぐらいの印象でよく分かっていませんでした。
しかし、現実世界の熱斗くんと電脳世界のロックマンを行き来しながら、事件の解決に導いていくという世界観もすんなり受け入れられたのは、変に知識がなかったが故に「エグゼから学ぼう」という気持ちでゲームを楽しめたというのもあると思いますし、ゲームの登場人物がみんな「等身大」だったからかなとも思います。
とにかく『エグゼ』は、近未来のSFチックな世界観ではありますが決して分かりにくかったり複雑だったりということはなく、とてもとっつきやすい子どもも大人も楽しめるゲームでした。
そんな僕のような当時の小中学生たちはきっと「PET」に憧れたのではないかと思います。「PET」というより、ネットナビに憧れたと言ったほうが正しいでしょうか。
たとえば、主人公の熱斗・ロックマンのコンビや幼なじみのメイルちゃんとロールのコンビなど、それぞれ主人とよく似ているネットナビがほとんどなのですが、中には大企業の社長令嬢であり、飛び級で熱斗と同じクラスにいるやいとちゃんのネットナビ・グライドは執事のような大人っぽいキャラクターで、主人と世話係という関係性のコンビもいます。
そうした自分だけの相棒を誰もが持っていて、電脳世界でウイルスたちをやっつけるという構図に死ぬほど憧れて、僕は自分だけのネットナビを妄想し、絵の上手な友達に描いてもらって、あーでもないこーでもないと言いながら休み時間のほとんどを費やしていたのをよく覚えています。