■株のゲーム性で最後までドキドキ
『いたスト』がそれまでのすごろくゲームと違ったのは「戦略性」の面白さでです。たとえばモノポリーでは、一発即死のマスができた場合、絶対に逃げることはできず、止まる・止まらないは運次第です。ですが『いたスト』では、ほとんどの面で行かない地域があっても良く、危ないマスがあれば、通らないという選択肢があったのが画期的でした。通らないとサラリーがもらいにくいなどペナルティがあるので、危険をとるか、サラリーをとるか、そこの戦略も重要でした。
そして最大に画期的だったのが、さきほど申し上げた「株」の要素。子どもが遊ぶファミコン用のすごろくゲームに「株のやりとり」を入れてしまうあたり斬新で、シリーズで一番CMを打っていた『いたスト2』のCMでの名ゼリフ、「あの株売ったわねー」は、体感では木村拓哉さんの『MOTHER2』のCMの歌並みに見たように思います。
独占(強いマスを作ること)で負けることが分かっていても、株の先手で逆転ができ、株の売り買いなどなどで、妨害ができる。これが戦略に幅を持たせてくれ、劇的な逆転を演出し、最後までドキドキワクワクさせてくれました。こうした盛り上げ要素はプログラムにも組み込まれており、下位プレイヤーを優位にするためのサイコロの操作があり、超上級者ともなると、これらも計算してプレイせねばなりません。幅広いジャンルをやり尽くしたゲームのプロである僕が、生涯で一番時間を費やしたのが本作です。やりまくった結果、解説者並みに一目置かれるようになってしまい、プレイ中も派手な動きがあるたび「今のはどうですか?」と聞かれたり、ゲーム勝負で『いたスト』を選ぶと、ずるいとまで言われるようになりました。
1991年3月21日に発売となった初代『いたスト』はもうじき30周年。一番やり込んだあの『いたスト』を、Switchオンラインでも配信されることを願っております。