■『四月は君の嘘』

画像はアニメ『四月は君の嘘』DVD vol.1より

 2014年10月から2クールで放送されたテレビアニメ『四月は君の嘘』。元天才ピアニストの有馬公生(ありまこうせい・以下、公生)と、天才ヴァイオリニスト宮園かをり(みやぞのかをり・以下、かをり)の出会いから始まる、中学生の青春物語だ。

「ヒューマンメトロノーム」という異名を持つ公生はかつて、師でもある母を元気にしたい一心で譜面に忠実に“コンクールで勝つためのピアノ”を演奏していた。しかしある演奏会で母を喜ばせたいと感情を音にのせて演奏をしたところ、譜面通りに弾かなかったことを厳しくとがめられてしまう。気持ちが届かなかったショックから母にひどい言葉を浴びせ、それが最後の別れになってしまった。この記憶により公生はピアノの音が聞こえなくなり、ピアノの世界から遠ざかってしまう。

 そんな彼をピアノの世界に引き戻すのが、かをりだ。かをりは公生の気持ちなんておかまいなしに、傍若無人に彼が再びピアノを弾くことを信じてやまない。演奏者としての自分を無条件に信じてくれるかをりの存在は、公生にとっての新たなピアノを弾く理由となっていく。

「届くといいな」とたった一人を想って奏でた音が、確かにその人の心に残り、誰かの心にも連鎖していく。またその音は、大切な人たちからもらったものでできている。そんな「音楽」を通して生まれる優しくも熱い人と人とのつながりと、それがもたらす主人公の成長には、あたたかな希望が満ちている。

 また物語のラストに向かう中でタイトルやストーリーのあちこちに張られた伏線が回収されていくたびに、胸が締めつけられ涙が止まらなくなるだろう。

 加えて演奏シーンや楽器内部の緻密な作画も、この作品の必見ポイントだ。テレビアニメ公式サイトのスペシャルインタビューでイシグロキョウヘイ監督は、本作の制作にあたり指や鍵盤の動きを音にあわせる「ガチンコ作画」で挑んだと語っている。この言葉通り本作の演奏シーンには、音とアニメーションが乖離しない“リアリティ”があった。鍵盤に触れる指の強弱も細かく描かれているため、キャラクターが音にどんな想いを乗せて届けたのかが、しっかりと伝わってくるだろう。

■今度の休日は、泣けるアニメでデトックスを

 人生は楽しいことばかりではない。心にズシンと重りがのったようなつらい日々に、心がまいりそうになることもあるだろう。

 空想の世界を描くアニメは、現実とほどよく距離を置けるところも魅力的な映像作品だと筆者は思う。だからぜひ今度の休日は、今回紹介したアニメで涙を流して次の日からのエネルギーをチャージみてはいかがだろうか。

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