泣いて、ストレスを発散する「涙活(るいかつ)」。実際に感動で流す涙に、ストレス軽減に役立つ可能性があるとする研究もある(※有田秀穂『涙とストレス緩和』日薬理誌)。人というものは大小はあれどストレスを抱えて生きているものだ。だからこそ涙を流す機会をつくることは、デトックスにもいいと考えられる。
とはいえ人前で泣くのは、大人であろうと子どもであろうとけっこう恥ずかしく、勇気がいる行為ではないだろうか。そこで今回は家でこっそり存分に泣ける方法として、筆者おすすめの「涙が止まらない」アニメを紹介したい。
■『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
2018年1月期に放送されたテレビアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。日常動作にも一切の抜かりがない緻密な作画に定評のある京都アニメーション制作とあって、放送されるやいなやその映像美に感嘆の声が多数上がった。
物語は元孤児で人の感情を理解できない主人公のヴァイオレット・エヴァーガーデンが、唯一心から慕うギルベルト・ブーゲンビリア陸軍少佐から言われた「愛してる」の意味を知るために手紙の代筆業に挑み、成長していくというもの。
中でも10話「愛する人は ずっと見守っている」は、涙なしに見ることが難しいエピソード。ヴァイオレットは、余命いくばくもない母から娘に宛てた、その後の人生に寄り添う手紙を代筆する。人の生死を通して愛を描くそのストーリーに初回放送はもちろん、2020年の再放送でも号泣したという人がSNS上で続出していた。
この回の中で、一人娘のアンがヴァイオレットに感情をぶつけるシーンがある。通常キャラクターの声がかぶる場合、声の収録は別録りをする。しかしこの回でヴァイオレット役の石川由依さんとアン役の諸星すみれさんは、同じブースで収録したそうだ。演者自身が涙をこらえながら録ったというやりとりのリアル感、臨場感がまた、視聴者の感情をも揺さぶる。
またこの回は、ヴァイオレットの変化を如実に表している。相手の感情を理解できなかった彼女が、依頼相手とその人が大切に想う人を想って涙を流すのだ。このヴァイオレットの成長を見て、ずっと彼女を見守ってきた視聴者も一緒に涙を流すだろう。
もちろん10話以外のどの回も名作ばかり。ヴァイオレットとともにいろんな「愛」に触れた視聴者はきっと、大切な人への「愛してる」を思い出し、「ちょっと伝えてみようかな」という気分になると思う。
なお10話は、2020年9月公開の『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』へと続く重要な物語でもある。テレビシリーズを観たあとは、劇場にも足を運んでみてはいかがだろうか。上映中の劇場はすでに限られてきているので、気になる方はお早めに。