■やってほしいけど初代は後回しでいい理由とは

 まず、初代ロマサガのストーリーについてご説明いたします。人間が生まれて間もない頃、世界には悪しき神デス・サルーイン・シェラハという3兄妹がいました。彼らはモンスターたちを率いて、世界を支配するために神々と人間たちに戦いを挑みます。激しい戦いによってデスとシェラハは降参しましたが、サルーインだけは戦いをやめようとはしなかったため、神々の王・エロールは英雄ミルザにディステニィストーンという10個の宝石を託すと、ミルザはその宝石の力を使い刺し違えるようなかたちでサルーインを封印させることに成功しました。

 物語はその1000年後の世界。いまや伝承が語り継がれる存在でしかなかった邪神の復活の気配が色濃くなっていたのだった……。

 というあらすじです。ファンタジーRPGとしてとても壮大でワクワクしますよね。そして、ロマサガはフリーシナリオというものを採用しました。これはロマサガの大きな特徴でもあるのですが、なんとストーリーは冒頭のあらすじ以降、いきなり分岐します。

主人公は8人から選択、両親の職業を選べるのも新鮮だった

 8人の主人公から1人を選び、物語を進めていくのですが、その際にはどの街に行くのか、だれを仲間にするのか、どの敵を倒すのか、何回戦闘するのか、すべてプレイヤーの自由です。これには最初、困惑しました。そして困惑と同時に、私は今までRPGで「自分で考えてプレイする」ということをしてこなかったんだなと実感させられました。

 どこから行けばよいのかすら分からない、ではなく、どこから始めてもよいのだ、と変換できるまでに時間を要しましたが一度分かればこのゲームほど遊びごたえのあるRPGはありません。

 シナリオを手掛けるディレクターの河津秋敏さんも「3回目に遊んだときに一番面白くなるように調整している」とおっしゃっており、何度も失敗と成功を繰り返してルールや遊び方が分かってきた頃の、何周目かにこのゲームの神髄が見えてくるという構図になっているのです。1本のゲームを何度も遊ぶコアなゲーマーに向けた、いわば挑戦的なRPGだったんだと思います。

バトルシステムでは、武器を育てていく面白さも

 8人の主人公にはそれぞれに物語・そして専用BGMがあり、選んだ主人公によってスタート地点も違うため、たとえ2周目だったとしてもゲーム開始時からもうすでにまったく違うゲームを遊んでいるようなお得感があります。

 また8人の主人公の中には、特定のキャラクター同志でシナリオに関係しているキャラクターもいます。たとえば、ローザリアという国の貴族の息子・アルベルトは序盤、とにかくえらい目にあうのですが、その際に雪原の広がるバルハラントという地に流れ着き、別の主人公であるシフに出会うことができます。

 ということは、シフ編から始めてもアルベルトと出会うことができるということになりますね。つまり、違う主人公で始めれば彼らにいったい何があったのか、どんな経緯でそこに至ったのかなどを知ることができるというわけです。

シフ編序盤より

 ちなみに最大6人パーティで、さらに主人公の8人以外にも仲間にできるキャラクターが存在するので、誰を仲間にしてどのイベントをこなすのか、も自由です。仲間にしないことだってできちゃいます。

 そして、本作の特徴的な戦闘システムについて紹介します。ステータスにはレベルは存在せず、戦闘中に使用した技によって能力値が上昇していくというかたちになっています。なので、戦闘回数をこなせばそれだけ強くなっていくということに相違はありませんし、これは従来のRPGとも同じ要領で理解できるかなと思います。

くるくるっと回って蹴りを入れるレベルアップの瞬間が爽快。ドット絵がすごくかわいい

 しかし、重要なのはここから。まず、本作はスタート直後からさっそくフリーシナリオなので、主人公ごとに行ける範囲こそ限られますが、どの街から冒険を始めても大丈夫なように、敵の強さが「戦闘回数に応じた強さ」になっています。つまり、戦闘を重ねれば重ねるほど敵が強くなっていくのです。また、戦闘回数によって「時間経過」もしており、時期によってもう見ることができなくなってしまう限定イベントもあったりします。

 そしてシンボルエンカウントなので、理論上は戦闘をまったくすることなくラスボスまでたどり着けちゃう!というシステムなのです。まあ、実際はマップ全体に広がるおびただしい数の敵が追いかけてくるのでかわしながら進むのは99.9%不可能ですが……。

 この戦闘システムによって、ある程度強さが固定化されているボスより通常のザコ敵のほうが強くなるという現象が起きがちで、あまりにも道中のザコ敵が強すぎて詰んでしまうということもあります。

 しかも、いつでもセーブできる便利さが裏目に出て、ダンジョンの途中でセーブしてしまい、後戻りも進むこともできなくなるパターンの詰み方もありました。本当に難しいですし、このシステムを理解して慣れるまでとても時間がかかりました。

 そこでオススメなのが『ロマサガ3』というわけです。

 3は初代作の粗削りながらも意欲的な作風を受け継ぎながら、難易度をマイルドにして遊びやすくしてくれているのでロマサガ入門にうってつけ。今回は初代の紹介なので詳細は省きますが、もし「そんな骨太で癖のあるRPGがあるならやってみたい!」と思った方がいらっしゃればぜひ3から始めてみてください。

 そして面白かったら、1と2をプレイするとよいかもしれません。変な表現ですが、「1の時点でめちゃくちゃロマサガじゃん!」と感じるかと思います。

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