福山潤、脚本家・上江洲誠氏と交わす白熱プロ論「『暗殺教室』が人生で転換点になった」の画像
(左から)脚本家・上江洲誠と声優・福山潤(写真/橋本龍二)
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 声優雑誌『声優MEN vol.19』(双葉社)で、声優の福山潤が各業界のプロフェッショナルと対談していく連載企画「福山潤のプロフェッショナルトーク」の第3回が掲載され、『乱歩奇譚 Game of Laplace』や『暗殺教室』など、福山潤と縁の深い脚本家・上江洲誠氏がゲストとして登場。原作モノからオリジナルまで幅広いジャンルを手がける敏腕作家をゲストに迎え、その脚本術について大いに語ってもらった。同世代ということもあり、感じていることに共通点も多いふたり。さらに、奇しくも上江洲は脚本家として大きな変貌をとげようとしている最中ということもあり、対談は白熱。ふたりの本音トークで交わされた熱い想いを感じてほしい。

文/岡本大介
ヘア&メイク/杉野智行

■師の影響を受けたスキル

福山 上江洲さんは芸大出身なんですよね。もともと脚本家を目指していたわけではなかったんですか。

上江洲 そうなんです。勉強は苦手でしたが絵を書くのが得意だったという理由だけで芸大に進んだんです。ウェブ関連のアルバイトをしていたこともあり、将来はウェブデザイナーとかになるのかなとぼんやり考えていました。ただ向上心がまったくなかったので、優秀な成績で大学を中退しまして(笑)。やることがないのでホームページを作って遊んでいたら、「東京に来て仕事をしませんか?」とお誘いをもらったんです。

福山 そんなスカウトがあるんですね(笑)。それはどんなホームページだったんですか。

上江洲 雑誌の『てれびくん』の付録を、いいオトナの僕が本気で遊び、アホな文章とともに掲載していたんです。当時はホームページでおもしろい文章を書けるヤツがヒーローになれた時代だったんです。

福山 ありましたね。いわゆるテキストサイトですよね。「侍魂」と「ちゆ12歳」とか、流行りましたよね。

上江洲 そう。「ちゆ12歳」とはバナー交換もしてました(笑)。わりと人気のテキストサイトとして雑誌などで紹介してもらえるくらいではあったんです。

福山 僕の知る限りですけど、上江洲さんって脚本家さんには珍しく、ギラついているイメージなんです。

上江洲 え? まったくそんなつもりはないですよ(笑)。

福山 いやいや、これは褒め言葉なんです。ケンカ腰とか怖そうとかではなくて、「絶対におもしろいものを作ってやるぜ!」っていう気持ちが全面に出ていて、そういう気持ちを隠さない方はなかなか見受けないので。

上江洲 それは師匠の黒田洋介さんだったり、若い頃からよくご一緒しているアニメ監督の岸誠二さんの影響ですね。ふたりともすごくエネルギッシュな方で、人を引っ張っていくタイプなので、なんとかふたりの歩幅に合わせようとした結果身に付いたスキルだと思います。本来はめちゃくちゃ内向的で、自分の部屋でプラモデルを作っているときが、いちばん幸せという性格ですから(笑)。

福山 そうだったんですね。

上江洲 逆に、僕から見た福山さんは完全なトップランカーです。

福山 ありがとうございます(笑)。

上江洲 福山さんを呼びたいと思うときって、作品に対して勝算だったり明確なプランがある場合で、なかなか普通には切れないカードだなと感じていますね。

福山 僕が最初に上江洲さんの作品に出演させてもらったのは『人類は衰退しました』の助手さん役でした。

上江洲 そうそう、助手さんってまったく喋らないキャラクターなので、こんなビッグネームを呼んでおきながらセリフが無いなんて、申し訳なさすぎて顔合わせに出られなかったくらいでした(笑)。

福山 いわゆるカメオ出演で、当時流行したお遊びの走りですよね。音監の飯田(里樹)さんと岸監督はずっと笑っていましたけどね(笑)。

上江洲 あれは完全にあのふたりが悪いんです(笑)。

福山 「イケメンで可愛くお願いします」ってお願いされましたから。

上江洲 セリフがほぼないのにね(笑)。

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