©TNSK・講談社/春来亭活動写真部
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現在放送中の大正落語ファンタジーアニメ『うちの師匠はしっぽがない』にて、“上方落語四天王”の一人・大黒亭文狐役を演じているのが、『Go!プリンセスプリキュア』や『蒼き鋼のアルペジオ』で知られる声優・山村響。M・A・O演じる弟子・まめだのがむしゃらさに呆れながらも、なんやかんやで世話を焼いてくれる情深い師匠を、チャーミングに演じている。

二人の人間ドラマと共に本作の大きな注目ポイントとなるのが、作品の題材である上方落語。本作には毎回落語シーンがたっぷりあり、これまでの第4話までで既に『遊山船(ゆさんぶね)』『崇徳院』『三枚起請』『東の旅』『らくだ』と五つの演目が登場している。もちろんこの落語シーンの多くを担っているのが、人気落語家の文狐を演じる山村だ。

「WEB声優MEN」では、まめだ役のM・A・Oインタビューに続いて山村にもインタビュー。前編では本作に欠かせない上方落語への挑戦について、興味深い話を語ってもらった。(前後編)

 

※ ※ ※

 

まずは“耳で慣れる”ことから始めた上方落語への挑戦

山村響
山村響

――本作は上方落語が題材になっていますね。古くから続く“噺のプロ”の世界ですから、落語家役というのは大きな挑戦だったかと思いますが。

 

落語、しかも江戸落語ではなくて上方落語と聞くと、皆さん「独特の世界だろうし、ちょっと敷居が高いのかな?」とお思いになるかもしれませんが、堅苦しいところは全然ないんです。私は原作から「上方落語はこんなにも楽しくて、こんなにも人の心を動かすことができるんだよ」と教えてもらいましたし、何ならこのお話では人じゃないものの心まで動かしていますし(笑)。そんな風に、いとも簡単に私たちの手を引いて作品世界に連れて行ってくれる上方落語の構成や演出は、とても素敵だなと感じました。

 

――確かに劇中、実に様々な“人じゃないもの”の心まで動かしていますよね。本作に臨むに当たって、どんな事前準備をされましたか。

 

役が決まってからは作品に出てくる演目を中心に、いろいろな師匠の噺(はなし)を聴いて雰囲気を掴んだりしていきました。とにかく耳で慣れることが大事かなと考えて、いろんな噺を聴いて楽しんでましたね。

 

©TNSK・講談社/春来亭活動写真部
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――第4話まで放送されましたが、ここまで文孤師匠の落語シーンが毎回ありましたね。

 

全13話のうち、前半は結構文狐の独壇場のようになっていて、毎回毎回いろんな演目をやっていたので、毎週たくさん勉強させていただきました。もちろん大変なこともありましたが、落語の師匠がたがとても褒めながらご指導くださったので、辛さはありませんでした。

 

――上方落語ならではの特徴や難しさを感じられた部分はありましたか。

 

上方落語にはハメモノ(三味線と鳴物)という音での演出があって、江戸落語よりにぎやかな雰囲気があるのですが、私はそこがすごく好きなんです。例えば第1話の『遊山船』では、花火が上がるところでハメモノも一緒にドンドン鳴らすんですが、それによって花火の情景がより深く伝わるのが素敵だなって。

ただやっぱり、難しさもたくさんありました。落語は一つの噺の中に複数の登場人物が出てくるので、その切り替えも難しかったですし、ツッコミを入れるタイミングも難しかったですし……。それにプラスして、私は大阪出身ではないので大阪弁というのも難しさだったんですが、「やってやるぞ!」という気持ちで頑張りました。

 

――さらにその中でキャラクターらしさも表現しなければいけませんし。

 

そうなんです。アフレコ前に師匠が吹き込んでくださった音声データをいただくんですが、それを何度も何度も聴いて体に馴染ませて、そこから少しずつ自分のアレンジを入れていきました。「文狐としてこれを話すなら、どういう風にするかな?」と、自分なりに考えて作っていきましたね。

 

 

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