小野大輔
小野大輔

豪華アーティストとのコラボレーション曲と小説家・青山美智子による“プロローグ”で紡がれる、小野大輔の最新ミニアルバム『Sounds of Love』(2022年10月19日発売)。本作制作のきっかけを聞いたインタビュー第1回に続き、いよいよ各楽曲について深掘りしていく。

第2回の今回は、ゴスペラーズの酒井雄二による「Sounds of Love」、同じくゴスペラーズ・村上てつやによる「DING DONG」、そしてコトリンゴによる上田麗奈とのデュエット曲「また会う時は (with 上田麗奈)」について語ってもらった。(全3回)

インタビュー「第1回」はこちら

 

※ ※ ※

 

声優が一番、朗読が上手じゃないといけないと思ってるし、そうありたい

 

 

――今回は楽曲それぞれについてお伺いしていきたいと思います。まずはゴスペラーズの酒井雄二さんが作詞・作曲された「Sounds of Love」。ミニアルバム最初の1曲であるこの曲を初めて聴いたときは、いかがでしたか。

 

僕の好きなゴスペラーズだ、と思いました。ここに描かれているのって“不変の愛”ですよね。そして、僕が思っていたけど答えが出せなかった気持ちを、全部歌で教えてくれている楽曲だと思います。

 

――恋人同士の愛というより、もっとスケールの大きな愛だと感じました。

 

僕はこの2年間ずっと、暗闇の中を歩いているような閉塞感や不安に囲まれて生きてきたような気がします。でもそれって、みんなそうですよね。この世界に生きる人すべて、得も言われぬ不安を感じていたと思います。その中で、何か希望がないと生きていけない。でも多分、真実だと思うんですよ。どこかに光があるっていうのは。それを見せてくれるのは、自分の周りの人なんですよね。

きっと昔は、人との繋がりがもっと希薄だったんじゃないかな。人のことを想う時間が少なかったり、会えることが当たり前だからその機会を大切にしなかったり。悪いことばかりじゃなくて、今だからこそ気付けた絆や見えない縁があるなって、この曲を聴くと感じられる。だから今歌う意義がある。そう思います。

 

――歌っていてお好きなところはありますか。

 

サビですね。この曲はこれを言いたいんだと思いますし、揺るぎない想いだし、歌っていて幸せです。サビ全体好きなんですが、特に好きなのが「満たす」という言葉。満たされるって大事だよなって。みんなどこか足りないから、憤ったり落ち込んだりする。多分、自分が満たされるために歌ってるんだと思うし、生きてるんだと思います。

僕はよく“多幸感”という言葉を使うんですが、この曲は何度聴いても多幸感を味わえるし、本当に同じ時代に生きていて良かったなと思います。ゴスペラーズさんや、仕事で出会う人たちみんな。そしてこのサビを聴いていると、今自分をこんなにも満たしてくれるのは、自分を取り巻く人たちなんだなと感じます。

 

――この曲が、人との絆をテーマにしているこのアルバム全体のタイトルにもなっている理由が、よくわかります。ところで「Prologue」は、もう収録されたんですよね。

 

ほぼ収録完了しています。

 

――青山さんが書かれた「Prologue」を朗読されてみて、いかがでしたか。

 

僕……朗読、得意なんですよ(笑)。

 

――存じ上げております(笑)。

 

はははは! いや、これはドヤっとして言ってるわけじゃなくて自負なんです。自負であり、矜持ですね。声優が一番、朗読が上手じゃないといけないと思ってますし、自分はそうありたい。青山先生が書いてくださった物語は、その構成、文章の美しさ、世界観、見える景色、すべてが美しくて素晴らしいものでした。だから「これは、このまま表現するだけで良いものになる」と思いましたね。

 

――では悩んだりされることもなく。

 

いい本だと、考えることもあんまりないんですよ。さらに言うと、朗読するときに一番大事なのは“イメージ”なんです。その文章が表現している風景や人物像。誰かに向けて喋っているなら、その人との距離感。そういうものが全部見えないといけないと思います。読み手がイメージできてなかったら、聴いている人も絶対イメージできないじゃないですか? 青山先生の本はそのイメージが容易にできます。なのでただただ自分の中でイメージを膨らませて臨みました。

 

“大人なのに初心な恋”というのに、ちょっと照れました(笑)

 

 

――2曲目の「DING DONG」は、ゴスペラーズの村上てつやさんが作詞作曲です。自然と体が揺れてしまう、心地よい曲ですね。

 

この曲は、僕が好きなゴスペラーズのもうひとつの側面なんですよね。大人の切ない恋。落ち着いたドキドキ。村上さんご本人はとても明るくておしゃべりな方なんですが、すごく繊細な世界を表現されるので、その切なさがすごく伝わるんですよ。この楽曲のハイライトだと思うんですが、中盤で出てくる「最後の恋なら」ってフレーズが僕はすごく好きで、まさしく大人だなと。だって「もうこれ以上、恋しない」ってことですから、すごく誠実な愛の告白ですよね。こんなことを思えるなんて、なんていい奴なんだ、こんな風に恋がしたい、って思います。

余談ですが、ゴスペラーズさんのライブを今年も観に行ったんです。声優の佐藤拓也と一緒に。それが昔から好きな人なら泣いてしまうセットリストで、中でも「ひとり」「ミモザ」「約束の季節」という流れがあったんですよ。僕も佐藤拓也も大好きな曲ばかりで、イントロが流れる度に両手で口をおおって「やだ、待って! 無理……!」と、乙女の反応をしてしまって(笑)。

 

――そのお気持ち、わかります(笑)。

 

帰り道で「なんで僕たちはこんなにゴスペラーズが好きなのか」を話し合ったんですが、「自分たちがキュンキュンするから」というのは間違いなくあります。僕らの中にいる乙女が泣くんだと思います。でもそれに加えて、「僕たちは、カラオケでゴスペラーズを歌うとモテると思ってたじゃないか」と(笑)。ゴスペラーズは、男としての憧れでもあるんですよね。「DING DONG」はそんな側面も感じる楽曲だと思います。

 

――小野さんが憧れる大人の男性なんですね、この曲の主人公は。では「DING DONG」の朗読は楽しかったのでは?

 

実はこれが5編の中で一番難しかったですね。大人だけどドキドキしなきゃいけない、初心だけど落ち着いている、っていうのが。

 

――確かに、相反する要素です。

 

最初は落ち着いて読んでみたんですが、やっぱりそれだとドキドキが伝わらなくて、この朗読だけは何度かトライしてます。こういうことは言っちゃダメなんですが、大人なのに初心な恋をしているということにちょっと照れました。演じる人が照れたらダメなんですけど(笑)。

 

――芸歴20年の小野さんでも、照れるセリフがまだあるんですね!

 

それくらい実は甘いんですよ。この5編の中で「DING DONG」は、一番甘いストーリーなんです。

 

 

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