小説『農民関連のスキルばっか上げてたら何故か強くなった。』が待望のアニメ化を果たした。主人公のアル・ウェインは超一流の農民になるためだけにスキルを磨く男。しかし、農民関連のスキルを極めた彼はある時、王都メイギスの第一王女ファル・イース・メイギスに気に入られ、やがて旅に出る。果たして、彼らを待ち受けるものとは…。主演のアル・ウェイン役・榎木淳弥のインタビュー後編。今回は、声優として立つ生の舞台や、アニメと吹き替えの差を榎木がどう感じているのか、いまの想いにも迫る。
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アニメの芝居と舞台の芝居の両立を目指したい
――共演者の皆さんについて、ぜひお一人ずつ印象や魅力などをお伺いしたいのですが、まずは田中美海さん。王都メイギスの第一王女ファル・イース・メイギスを演じていらっしゃいます。
おそらく、今回初めてご一緒させていただいたと思うのですが、田中さんはお若い方なので、それだけで新鮮さがすごく出てきますよね。そのフレッシュさが魅力だなと感じました。
――冒険者ギルドの受付として働くヘレン・リーンを演じていらっしゃる、大久保瑠美さんはいかがでしたか。
僕と大久保さんって年齢はほとんど一緒ですが、キャリアとしては大久保さんのほうが先輩なので、魅力を語るというのはためらわれるんですが……。やはりいつも安定したパフォーマンスでいてくださるので、すごく安心感があります。それにご自分の考えをしっかり話される方なので、そこも尊敬していますね。
――諏訪彩花さんは、勇者の子孫・ルリ役ですね。
諏訪さんも僕より先輩だと思いますが、声だけでもボーイッシュさが伝わってきますよね。かわいらしいキャラクターもたくさん演じられていますが、今回演じられているルリは、その男の子っぽさが諏訪さんの声からはナチュラルに感じられますよね。
――そしてアルの妹・イルビア役、田村ゆかりさん。
田村さんとは収録が一緒ではなかったのですが、やっぱり“田村ゆかりさん”というのはひとつのブランドですからね。まずブランドを築き上げるのがすごいことだと思いますし、オーラみたいなものを感じます。
――ところで榎木さんは、舞台や朗読劇にも取り組まれてますが、舞台での生のお芝居とアニメーションのお芝居とでは、どのような違いを感じていらっしゃいますか。
あくまで僕の主観ですが、アニメの芝居は歌舞伎などの伝統芸能のように“型”が存在しているんです。その型をどれだけ習熟できるかがポイントだと思います。舞台は舞台で型みたいなものもありますが、自然に演じるというか、嘘がないように演じなければいけない。向き合っている人や観ている方に“この人、そんなこと思ってないな。嘘だな”と感じさせてしまったらもうおしまいで、自分自身を出していかなきゃいけなかったりするので、そこが違いかなと思います。
――舞台でのお芝居はエネルギーが必要になりそうですね。
というか、勇気がいる。やっぱりみんな、型を崩すのは怖いんだと思うんです。アニメでは自然に演じると“下手だな”と思われがちなんですが、逆に、舞台や映像での自然な芝居が根本にある人から見たら、型芝居は“あ、嘘ついてるな”と思うもの。でもある種の伝統芸能なので、それも別に悪いことではないんです。どちらがいい悪いではなくて、どちらもやれる人がすごいと思いますね。
――どちらも演じられる方に、共通しているものはありますか。
相当難しいことだと思います。もちろん、僕にもできません。声優はほぼ型芝居ですし、俳優は逆。朗読とかなどを聴いた印象では、役所広司さんや橋爪功さんはどちらもできる方なのかなと思います。
――では今はそこを目指していらっしゃるんですね。
そうですね、僕はどちらかと言うと型が苦手なタイプなので、そこが自分の課題かなと思います。僕は自然なお芝居もまだまだできませんが、嘘がない芝居のほうに惹かれるんです。どちらの芝居にもそれぞれの魅力がありますが、やはりこの仕事では型芝居を求められることが多いですから、両方できるほうがいいんじゃないかなと思っています。