名曲「ひとりごつ」の制作秘話
――ほかに本作の制作で、ご苦労されているのは、どのような点でしょうか。
やはり動きの部分ですね。とくにうさぎは、はちゃめちゃに動いているキャラクターなので、すごく大変。しかも、その動きに正解がないんです(笑)。それから、反響が大きかったのは「ひとりごつ」の11話ですね。「ひとりごつ」はハチワレが歌う本作のエンディングテーマでもあり、原作には歌詞があっても、メロディがないわけで、他の話と比べて大変でした。歌っているハチワレが尻尾でリズムをとって動いているのですが、そうした細かい動作も含めて、可愛さの追求を大切にしています。
――「ひとりごつ」の音楽は、どのようなこだわりで作られていったのでしょう。
ミュージシャンのトクマルシューゴさんに、作品世界に合う素晴らしい曲を作っていただきました。この作品には、可愛いだけじゃなく不穏な回もあるので、それに合わせた劇伴も作っていただいていまして、そこも怖い感じだけでない柔らかさも入れてもらっていますね。
――作中ではかなり独特な音の使い方をされているようにも思いますが、こうした部分はどんな狙いが?
『ちいかわ』は『めざましテレビ』で放送しているので、そこをベースに考えています。報道やエンタメ、トレンドなどいろんな情報を扱う番組の中で、いきなり『ちいかわ』が始まると視聴者の方も切り替えができないんじゃないかという危惧がありました。それを考えて、音楽とともにタイトルコールをつけ、明確に始まったということを示しています。
あとは効果音でしょうか。本作は1分アニメなので、その中で緩急が生まれるように、あえて大きめに音をつけているところがあります。
――うさぎの笛ラムネの音など、インパクト大でした(笑)。
そうですよね(笑)。キメラの回(16話)もそうですね。ちいかわがキメラと出会ったときの、ドキドキしている心臓の音はあえて大きめにつけていて、現場でも意識的にやっているところでもあります。
――例えば『蒸気船ウィリー』の汽笛の音や、『鉄腕アトム』のアトムの足音など、古典的なアニメーションの音の使い方に通じるのがあり、すごく感動しますね。
ありがとうございます。例えば、漫画だと擬音がありますよね。「バクバク」や「ドキドキ」という擬音が、ナガノ先生の原作では、文字によって見事な表現になっているのですが、実はアニメではそれを減らしているんです。その分、わかりやすく強い音を付けて、ちいかわ、ハチワレたちの感情がわかるような音作りを心がけています。
――スタッフのみなさんが、原作を何度も参照され、ディテールを追求されているのがわかります。
ファンの方も、そうした細部に注目してコメントしてくださったりするんです。それらを見ると、私たち制作側も本当に嬉しいんですよね。
後編に続く。
障子直登 しょうじ なおと
1993年生まれ、京都府出身。アニメプロデューサー。本作が初プロデュース作品。
INFORMATION
アニメ 『ちいかわ』
原作:ナガノ「ちいかわ」
シリーズディレクター:三原武憲
セットアップデザイン:朝倉夕貴
色彩設計:石黒けい
撮影監督:金子直広(三晃プロダクション)
音響監督:土屋雅紀
音楽:トクマルシューゴ
編集:茶谷真悟
アニメーション制作:動画工房
《声の出演》
ちいかわ:青木 遥
ハチワレ:田中誠人
うさぎ:小澤亜李
モモンガ:井口裕香
ポシェットの鎧さん:杉田智和
労働の鎧さん:東地宏樹
ラーメンの鎧さん:松岡禎丞
ラッコ:内田雄馬
くりまんじゅう:淺井孝行 他
《TV》
フジテレビ系列『めざましテレビ』(5時25分~8時放送)内にて、
毎週金曜7時40分ごろ放送
《無料配信》
放送後(8:00~)に1 週間限定見逃し配信
YouTube、TVer、GYAO!、FOD
公式Twitter:https://twitter.com/anime_chiikawa
公式 HP:https://www.anime-chiikawa.jp/
©ナガノ/ちいかわ製作委員会