現在、『週刊少年サンデー』(小学館)にて連載中の『よふかしのうた』。夜に眠れない中学2年生の夜守コウと、吸血鬼の七草ナズナが出会い、恋に落ちていくまでを描く大人気コミックス。そのアニメが、フジテレビ"ノイタミナ"ほかにて、この7月からスタートしている。
注目は、夜の世界の描写。ナズナやコウたちが明るく、どこか後ろめたくも自由に夜を生きる姿は、「よふかし」の楽しみを知っている人々には深く心に刺さるだろう。さらに注目点はアニメのオープニング・テーマ、エンディング・テーマ。本作のタイトルのもとになったCreepy Nutsの『よふかしのうた』がEDで流れ、OPでは新曲の『堕天』がエモーショナルに作品を彩る。
今回はアニメの放送&配信を記念し、原作者のコトヤマ先生にインタビュー。アニメ化への想いや創作秘話をお聞きした。
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「キャラクターを作るということは、ギャップを作るということ」
――本作『よふかしのうた』の発想は、どのように生まれたものでしょうか。
「最初は『団地』を描きたいというところからでした。その後、『団地』、『夜』、『少年』、『吸血鬼』と描きたい要素を連想して積み重ねていった結果、今の形になりました」
――コウとナズナのキャラクター、見た目や性格はどのように生み出されていったものでしょうか。
「コウは、自分の中の『少年』像として、『中学2年生』が概念として一番美しいと思っているので、中学2年生にしました。そのほかの外見に関しては、でかいスニーカーが描きたくて、そこはこだわりました。ナズナは、ギャップから生み出していったキャラクターだと思います。キャラクターを作るということは、ギャップを作るということなので、『吸血鬼は恋愛的な面で強者でいなくてはいけない』という一般認識へのギャップから作っていったキャラでしょうか」
「二人ともキャラにぴったりの声」
――その二人を佐藤元さん、雨宮天さんが演じられますが、お二人にどんな印象をお持ちですか。
「お二人ともキャラにぴったりの声だと思いました。佐藤さんは少年の初々しさを持っていて、ちゃんと少年を演じてくれる安心感がありました。フレッシュです。雨宮さんは、ナズナを可愛いけど、ちゃんと落ち着いているような演じ方・声質でしっかりと演じてくれていて素晴らしかったです。ありがたいです」
――マンガを執筆される際に、キャラクターの声はイメージされますか。
「明確にあるわけではないですが、このキャラの声は高いとか低いとかは、ぼんやりとあります」
――コウとナズナ以外で、とくにお気に入りのキャラクターを教えてください。
「探偵さんです。ビジュアルも性格面も好みです。探偵さんは、物語のなかで、行動理由が一番はっきりしているので、ある種主人公のように描いています」
「よふかしは毎日しています。基本的にはお酒を飲んでいます」
――原作、アニメともにほとんどがナイトシーンですが、「夜を描く」ことに対する先生のこだわりを教えてください。
「静かさと寂しさです。誰もが、学生の頃に外に出た時に絶対感じたことはあるはずだと思うんです。でも、歳をとって今外に出てもそんなに夜の静けさは感じられません。かつて確かにあったはずなんだけど、今は感じ取ることができない『夜』、自分のなかにあるイメージの『夜』を描きたいと思っています。
作画面では、街灯を描くことを意識しています。灯りって暗い時に初めて実感して見えるんですよね。そこに街灯があるよ、というアピールそのものが夜の背景になるのかなと思います」
――執筆されていて、とくに楽しかった場面はどんなところでしょうか。
「第1話と第2話が初めて完成したときは、この漫画の骨組みができたな、と達成感がありました。特に1話目は完成までに何ヶ月かかかったので。その他の回では、ナズナと目代キョウコの過去回(編集注:第8巻収録)です」
――ところで、先生はコウのような「よふかし」はされますか。
「コウのようではないですが、『よふかし』は毎日しています。基本的にはお酒を飲んでいます」