室町時代の京の都を舞台に、民衆を熱狂させる2人の若者が犬王と友魚。突如現れた異形の能楽師・犬王と、盲目の琵琶法師・友魚(ともな)を、古川日出男の原作を得て、アニメ界の鬼才・湯浅政明監督が描ききった『犬王』が公開間近。躍動する犬王の舞と、五感をダイレクトに刺激する友魚の歌声。まさに体感型のミュージカルアニメーションに声優として出演したのが、アヴちゃんと森山未來だ。今回はアフレコの裏側やライブシーンへの想い、作品を経た熱い想いの丈を聞いた。
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柔軟な表現の場で伸び伸びと演じる
――まるでライブや舞台を見ているような映像と声が素晴らしい本作ですが、その収録はどのように進めていったのでしょうか。
アヴちゃん 実は私達が一緒にセリフを合わせたのは一回だけなんです。最初の一回の練習で、お互いの声のトーンを見て、あとは未來氏の芝居を受けて気持ちを高めていく感じでしたね。
森山 とにかくアヴちゃんの声色の作り込みがハンパじゃなかった。犬王が幼少期から成長していく過程での声の変化もすごかったんです。それを聞いて芝居の想像が広がったし、自分の指針になりました。
――現場でセリフが変わることも?
アヴちゃん ありました!
森山 台本自体がガラッと変わったりね。増えている部分もあったし、犬王と友魚の関係性の物語的なシーンがざっくりカットされてるところもありました。さらに、僕らの言葉次第でまた変えるってこともあった。すごく柔軟な現場でした。
アヴちゃん 最後の曲で、2人でデュエットしているところは、ハモリを未來氏が考えてくれて。一緒に歌いたいって言ってくれたから、2人で歌うことになったんだよね。
森山 そうそう。音楽の大友良英さんのスタジオに“こういうふうにしたいんです”って相談に行ったんです。そうしたら、「じゃあやりながら考えましょうか」って(笑)。
アヴちゃん ふふふ(笑)。でもそのハモリ部分がすごく良くて。他の追随を許さないものがありました。ここまで私達が伸び伸びやるっていうのも、想定して呼んでくれたんじゃないかなとは思うんですけどね。
森山 まあそうだろうね(笑)。
アヴちゃん 私は未來氏が、今回一緒にトライしてみて、すごいところまで連れていってくれたなって思うし、めちゃくちゃ楽しかったです。私が舞うことに関しては、犬王は最初の頃は手足もすごく伸びるし、駆け回ったりするキャラクターだから、それをどんなふうに声にしようかと考えましたね。
森山 すごいよね(笑)。