劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編]君の列車は生存戦略』特集のラストを飾るのは荒川美穂。彼女が演じる高倉陽毬(ひまり)は、物語の中心となる高倉兄弟妹の末妹で、余命わずかと言われながら笑顔を絶やさない可憐な少女だ。そして、陽毬がペンギン帽をかぶると現れる「プリンセス・オブ・ザ・クリスタル(プリクリ)」も、荒川が演じているキャラクター。10年前、彼女は正反対のふたりをどのように演じ、今回のアフレコにどのように臨んだのか、話を聞いた。(全3回)
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“みんなに愛されている陽毬”として演じる
――今回、アニメ『輪るピングドラム』が劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』に、しかも前後編の2部作に生まれ変わりました。10年越しということで驚きも喜びもあったかと思いますが、いかがですか。
最初は本当に驚きましたが、たくさんの方がこの作品を覚えていて応援してくださったということが、すごく嬉しかったです。映像も音楽も素晴らしくて見応えのある作品なので、劇場で観られるのはすごくいいですよね。TVシリーズのときに上映会をやったことがあるのですが、そのときもスクリーンで観る『輪るピングドラム』に感動した記憶があります。
――今回の劇場版では、新録はどのくらいされたのでしょうか。
正直なところ、陽毬の新録パートはほとんどないんです。基本的には子どもの冠葉(CV.木村昴)と晶馬(CV.木村良平)が振り返っていくという流れで、陽毬が登場するシーンはほとんどTVシリーズを再構成したシーンなので。
――そうなんですね。
でも、プリクリのシーンは、かなり録り直していただきました。プリクリには、ビシッと強い感じで演じることが求められていたと思うんですが、それが当時の私にとっては、とても難しくて。いま見返してみると、当時はすごくゆっくりしゃべっていて、たどたどしい感じだったなと思います(笑)。
――当時、あの高慢さをキュートだと感じながら拝見していましたが、今回はもっと大人びた女王様になっていらっしゃる?
きっと強さやたくましさが増している……と信じています!
――(笑)。やはり10年前のお芝居をご自分で聴くと、いろいろと気付く部分がありますか。
そうなんです(笑)。いまもそれほど上達したとは思っていませんが、昔のものは本当に粗が目立って、恥ずかしさがありますね。
――陽毬というキャラクターの捉え方について、10年前は気付いていなかったなという部分はありますか。
いまになって役の捉え方が大きく変わったということはないんですけれども、TVシリーズの収録をしていたときは、毎週徐々に設定がわかってくるじゃないですか。なので、話が進んでいく中で「そうか、やっぱりいろいろと抱えていたんだな」と腑に落ちた部分もあったりして、だんだん理解が深まっていきました。でも最終的には、自分が捉えていた陽毬というキャラクター像は、大きく外れてはいなかったと思います。
――TVシリーズを視聴していた当時は陽毬の愛らしさが印象に残っていたのですが、改めて彼女について考えると、病弱で余命わずかで、複雑な過去を背負っていて……と、非常に重いものを抱えながら笑っているキャラクターなんですよね。
私も、基本的には“天真爛漫な陽毬”をイメージしていたんですが、徐々に過去が明らかになってくると、実はすごく我慢していたんじゃないかと思うようになって。どうしてもそのイメージに引き摺られて暗くなってしまうことがあったんですが、シーンによってはその暗さは必要なくて、明るくやってほしいというディレクションをいただくことが多かったんです。なので、あまり考えすぎずに……と言うと語弊があるかもしれませんが、“みんなに愛されている陽毬”というところに重きを置いて演じるようにしていましたね。