ある未来。人間はそれまでの姿形ではなく、獣人、サイボーグ、魔族など多様な姿を持つようになっていた。東京の街は、AIが管理する高い壁に囲まれた地域「クラスタ」に分かれて、それぞれが独自の文化、常識を育んでいた。しかし、なかには自らのクラスタに適応できない者も……。そうした人々を別のクラスタへと逃がすことを生業にする者たち、「逃がし屋」がいた。その「逃し屋エクストラクターズ」のリーダーで、主人公のエクアを演じているのは、『小林さんちのメイドラゴンS』など、人気作に続々出演中の嶺内ともみ。彼女に、現在放送中の本作の魅力について聞いた。
聞き手/岡本大介
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「エクアの優しさは一周回って怖いところでもあります」
ーー最初に作品の台本をご覧になったときの印象はいかがでしたか。
「最初に読んだときは、SFっぽい感じなんだと思いました。私が演じさせていただいたエクアさんは、はじめは主人公っぽくないと思っていて、どちらかというと主人公を支える側のキャラクターなのかなという印象でした。でも、いざ収録が始まって音響監督さんや監督さんにお話を伺った際に、彼女は普段、笑顔で優しいのですが、その優しさが一周回ると怖さにもつながるんじゃないかというお話をお聞きして、そういう意味では、いろんな演じ方ができる可能性のあるキャラクターだなと思いました」
ーーとはいえ、エクア自体が謎多きキャラクターでもありますが、彼女について、スタッフ陣から説明はありましたか?
「スタッフの皆さんも一緒に作っていってる印象でした。そもそも人なのか、人ではないのかというところにも謎がありますから、私自身は想像で補っています」
ーー嶺内さんはエクアのことをどう捉えてますか。
「ものすごく合理的な性格だなと思います。何より、逃がし屋に『逃げたい!』と依頼があり、任務を遂行していくお話のなかで、エクアさんは請け負う仕事を合理的にまっとうしていくんです。しかも、依頼者本人にとっては大きなことでも、第三者から見たら小さく思えるような悩みもあるわけです。ですが、エクアさんはどんなものに対しても、ものすごく肯定的にコミュニケーションを取っています。そこはすごく安心感のある人だなと思いますし、逆に少し怖いところもあるんですよね」
「共感するところは、相手がどんな発言をしてもそれを否定しないこと」
ーーご自身との共通点ということでいうと、どんなことがありますか。
「エクアさんはリーダーという立ち位置ですが、私はリーダータイプではないんです。みんながうまくいくようにスケジュールを立てるとか、裏方のほうが得意なので、そういう役目を選んできたように思います。共感するところは、相手がどんな発言をしてもまずはそれを否定しないことです。私自身、コミュニケーションをとるうえで大事にしている要素なので、そこは一緒だなと思っています」
ーーアフレコで、印象に残っていることを教えてください。
「いつも難しいなと思うのは、感情的に動いちゃいけないところです。たとえば、お話のなかで人が困っていたり、怪我をしていたりすると、役としてとにかく全力で助けてあげたいと思ってしまうんですけど、そこはやりすぎないでくださいとスタッフさんに言われました。例えば仲間が致命傷のような傷を負っていたら、仲間思いの優しい人であれば心配したりすると思うのですが、エクアさんの場合は、それとは少し違うところがあって、ミステリアスな部分を感じています」
ーーあくまで合理的な判断をするという意味でしょうか。
「もちろん、事柄に対して心配はしますが、優しい人だったらもっと表に出して心配したり、手助けをすると思うんです。でも彼女の場合は、少し手前のところで止めないといけないんですね。そのバランスがすごく難しかったです」
ーー塩梅が難しそうですね。今回の逃し屋のメンバーは5人組です。共演者も豪華だと思いますが、現場の雰囲気はいかがでしたか。
「基本的には、私と高橋李依さんと長縄まりあさんという逃し屋の女性3人、プラスでゲストの方と掛け合いをすることが多かったです。逃がし屋のお二人とも現場のことをよく見てくださいますし、毎回違うゲストの方がいらっしゃるので、その度にコミュニケーションをとっていて、すごく学ばせていだいています。山口貴之音響監督、橋本裕之監督もフレンドリーにお話をしてくださる方なので、とても温かい現場でしたね」
続きは明日公開の後編で!
プロフィール
みねうち ともみ
2月22日生まれ、東京都出身。テレビアニメ『スロウスタート』(18年)でメインキャラクターのCVを担当し、話題に。その後も『SCARLET NEXUS』(21年)、『小林さんちのメイドラゴンS』(21年)などの話題作に多数出演。
INFORMATION
TVアニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」
原案・クリエイティブ統括:谷口悟朗
監督:橋本裕之
原作:SSF
シリーズ構成・脚本:賀東招二
キャラクターデザイン原案:コザキユースケ
企画・プロデュース:スロウカーブ
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
声の出演:嶺内ともみ 高橋李依 長縄まりあ 速水 奨 三木眞一郎 ほか
放送中
フジテレビ:毎週水曜24:55~/関西テレビ:毎週木曜26:25~/東海テレビ:毎週土曜25:45~/北海道文化放送:毎週日曜25:10~/テレビ西日本:毎週水曜25:55~/BSフジ:毎週水曜24:00~/FODにて先行独占配信中・見逃し配信もあり
establife.tokyo
©SSF/エスタブライフ製作委員会
Story
舞台は未来の東京。獣人やサイボーグなど多様な姿を持つようになった人間は、AIが管理する数多の閉ざされた地域「クラスタ」に住み、自由な行き来を止めてそれぞれが独自の文化や常識を育んでいた。しかし、中には自らのクラスタに適応できない者も。その者たちのために、別のクラスタへと逃がすことを生業とする者たち「逃がし屋」がいた。「逃がし屋」は、あらゆる方法でAIの裏をかき、クラスタ間の移動を成功させていくーー。