アニメ『であいもん』ヒロイン・結木梢と追崎史敏監督の対談も、いよいよ最終回。今回は、リアリティとナチュラルさを大事にした本作ならではのこだわりを、とことん語ってもらった。そして本作といえば外せないのが和菓子。二人の和菓子にまつわるエピソードも収めたこの対談から、和菓子や京都、そしてアニメ『であいもん』の優しい魅力を感じてもらいたい。(全3回)
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知らないまま何となく描いても、何となくの絵にしかならない
――対談第2回では京ことばの難しさを伺いましたが、他に京都を描く面白さや難しさはありましたか?
追崎 この作品を作り始めたのはちょうど2年前、新型コロナの流行が始まった頃だったんです。京都まで何度かはロケハンに行けましたが、やはり頻繁には行けなかったので、その中でどういう画作りをしていくかは苦労しました。風景などで何か嘘をつくとしても、「実際はこう」とわかった上でやりたいんですよね。何も知らないままで何となく描いてしまうと、何となくの絵にしかならないので。そういうところを常にひとつずつ検証しながら作ったので、時間はかかりました。
――本作は京都の四季も描かれていきますから、その辺りも大変そうです。
追崎 これは奇跡だと思ってるんですが、新型コロナの流行が始まる前の年、別の仕事で大阪に行く機会がありまして。その頃にはもう『であいもん』は決まっていて、帰る日がちょうど祇園祭の宵山の日だったので、一人で行って写真を撮っておいたんです。それから2年間、宵山は中止になっているので……。
――監督が撮影しておいた写真がなかったらと考えると、ゾッとしますね。
追崎 本当に「撮っておいて良かった!」と思いました。実際、本編ではそのときの写真をベースにして描いたので、あれがなかったら祇園祭の表現はもう少し曖昧になっていたかもしれません。
――本作が細部まで丁寧に作られていることが、改めて伝わってきました。視聴者の方に注目してほしいポイントなどはありますか?
追崎 うーん、そうですね。キャラクターも見てほしいし、背景も見てほしいし、……絞れません(笑)。むしろ細かいところの面白さを、ぜひ皆さんに見つけていただきたいです。
結木 あの、もちろん物語も観て感じていただきたいんですが、音の話もしていいですか?
――もちろんです!
結木 和菓子を作っているシーンで、後ろに流れている効果音があると思うんです。蒸気の音だったり、粉を練っている音だったり。あれは、音響の方が実際に京都の和菓子屋さんまで行って、厨房の音を録ってきてくださった音なんですよ。そういうところまでこだわって作られているので、ぜひ音にも注目していただけると嬉しいです。
追崎 かなりマニアックなポイントだけどね(笑)。でも今回は環境音を大事にしていて、普通のアニメよりBGMを少なめにしているんです。例えば春なら、鳥が鳴いている声や風が吹いている音、そういう音を常に薄く入れるようにしました。そのほうがリアルだし、キャラクターの芝居と画をしっかり見てもらえるかなと考えて。
――四季折々の美しさを取り入れる和菓子の美学や感性に通じるものがありますね。
追崎 ああ、そうですね。まだまだですけど、近づけたらいいなと思ってます。