『であいもん』結木梢×追崎史敏監督対談(1)「京都に行ったら登場人物に会えそうなくらい、リアルで自然な作品」の画像
結木梢(雪平一果役)

10年前に夢を追って上京した和(なごむ)は、父の入院を知らされ、実家の和菓子店・緑松(りょくしょう)を継ぐことを決意。しかし京都の実家に戻ってみると、わずか10歳ながらしっかり者の少女・一果(いつか)が後継ぎ候補となっていた――。店を巡る争いが繰り広げられるかと思いきや、本作で紡がれるのは、事情を抱えた少女と大らかな青年が一風変わった絆を育んでいく物語だ。

浅野りんによるこのハートフルコミックがTVアニメとなって、4月6日より放送スタート! 主人公の和を島﨑信長が、そしてヒロイン・一果をフレッシュな結木梢が演じる。本作の放送開始に合わせて、「WEB声優MEN」では一果役の結木と追崎史敏監督の対談を実施。第1回となる今回は、二人が感じる原作の魅力、そしてそれをアニメーションで表現するための試行錯誤を語ってもらった。(全3回)

 

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何でもないドラマなのに、それが心地いい

本作の舞台となる和菓子店・緑松

――本作は『ヤングエース』で2016年から連載されている、和菓子店を舞台にした同名コミックが原作です。まず原作を読まれたとき、お二人はどんなところに魅力を感じましたか?

 

追崎 この仕事のご相談を受けて初めて知った作品だったんですが、読ませていただいた瞬間に「やりたいです!」と立候補してしまったくらいで(笑)。いまどきこういう作品って、ありそうでなかなかありませんよね。何でもないドラマが続いていくだけなのに、それがいい。そこにすごく惹かれたので、細かいことはひとまず置いておいて、「とにかくやりたいです!」と前のめりになった記憶があります。

 

結木 私の最初の感想は、温かくて優しくて、いまの時代に必要なぬくもりが至るところに散りばめられている作品だなって。読むだけでスッと心に入ってきて、寄り添ってくれるようなお話がずっと続いていくので、疲れたときに読むととてもヒーリング効果がありますよね。登場人物も漫画のキャラクターというよりは、本当に現実を生きてる人間のような感覚があって。いま、この瞬間にも……

 

追崎 京都に行ったら、いるかもしれない(笑)。

 

結木 はい(笑)。京都に行ったら緑松が本当にあって、和さんや一果ちゃんがそこにいるんじゃないかと思えますよね。現実に存在してるかもしれないと思わせてくれるくらい、自然でリアルで、魅力的なお話だと思いました。

 

――それをアニメーションとして作っていくとなると、やはりその魅力はどこから生まれているのかを具体的に探る作業が必要になったと思いますが。

 

追崎 そうですね、そこからが大変でした。というか、まだ制作は終わってないのでいまも若干大変なんですが(笑)。京都にある和菓子屋さん、という現実にありそうな設定で、普通の人たちが普通の生活と普通の商売をしている。アニメーションにとっては多分、一番苦手なジャンルの世界だと思うんです。だから前のめりで手を挙げた後に「そうだ、大変だ!」と気付いて(笑)。ヤバいとは思ったんですが、やっぱり原作が純粋におもしろくて、「こういうドラマ、すごくいいな」と。元々こういうドラマは好きでしたし、やりたいという気持ちが勝ったので、大変だろうけど何とかなるさと思いながら取り組みました。

 

――やはりアニメーションという表現は、非日常を描くほうが得意なものでしょうか?

 

追崎 アニメーションの場合、ゼロから全部作らないといけないんですよね。でも京都という街は現実にあるんだから、そこに行って実写で撮ったほうが早いわけです。それを全部描かなきゃいけないのはやっぱり大変だし、リアルにこだわったところで実写にはかなわない。じゃあアニメーションならではの表現は何だろうと考えて、本作の美術の描き方に行きつきました。水彩画のような淡い感じなんだけど、描かれているのは京都に実際ある場所。そうすることで京都の空気をちゃんと出しつつ、絵としての魅力も出そうと狙いました。

 

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