中学2年生になるまで自分の中に眠るバレエへの情熱から目を背け、「男らしい息子」になろうとしていた潤平(CV.山下大輝)。幼い頃からバレエを厳しく教えられ、外の世界を知らずに育った流鶯(るおう/CV.内山昂輝)。『ダンス・ダンス・ダンスール』ではダンサーそれぞれがバレエと異なる向き合い方をしており、山下大輝も原作の魅力のひとつにその点を挙げている。本作の「振付」を担当した宝満直也は、彼らをどのように捉えたのだろうか。プロのバレエダンサー・振付家ならではの視点から語ってもらった、インタビュー第2回。(全3回)
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潤平はもっとも大切なものを持っている
――今回は、プロのバレエダンサーであり振付家でもある宝満さんの視点からご覧になった、登場人物たちの印象をお伺いしたいと思います。振り付けるためには、やはり彼らの個性や特徴を掴む必要があったと思いますが、宝満さんは彼らのキャラクターをどのように捉え、どんなダンサーだと思われましたか?
実は僕は、高校生のときにストリートダンスやジャズダンスをやっていて、それからバレエにのめり込むようになったので、バレエを本格的に始めたのはとても遅いんです。そういう意味で、潤平にはシンパシーを感じずにはいられません。もっとも彼のように身体的に恵まれていたわけでも、天才的なセンスがあったわけでもありませんが。でもその経験がなかったら、今こうして振付はしていなかったと断言できます。
そんな風に、学生の頃というのは、将来何に化けるか本当に分からない可能性の塊のような年齢ですよね。はっきり言って潤平は“持っている人”です。でもそれ以上にもっとも大切なこと、“踊りが大好き”という気持ちがあるというところに、可能性を感じるし、好感を持てます。逆に身体的にもセンスにも恵まれ、努力せずとも誰よりも舞台上で輝けるのに、踊りへの気持ちがそんなに強くなく、花開かないような人も現実にいます。
――本作でもそういう人物の存在が示唆されますね。では潤平のライバルであり、幼少期からバレエの英才教育を受けてきた天才少年・流鶯はいかがでしょうか。
流鶯はバレエへの気持ちが弱いわけではありませんが、バレエが小さい頃から生活の一部で、バレエの申し子のような子です。そんな彼にとって、潤平のただただ「バレエが楽しい!! 幸せ!!」という感覚は、とても衝撃的なのではないでしょうか。バレエ男子にとって、同年代のライバルのような存在がいるというのは、非常に大きなことです。