物語が音楽を生み出すインスピレーションを与えてくれる

 

――梶浦さんはとても多作でいらっしゃいますが、こんなにも多くの楽曲を生み出す源泉が涸れるということはないのでしょうか?

 

私は決して多作でもハイペースでもないと思いますよ。劇伴作家さんはもっと早いですから。でも私がこうして何曲も作れているのは、物語に音楽をつけることが多いからだと思います。自分一人で作っていたら今の10分の1も書けないと思いますが、物語そのものがインスピレーションの塊なので、方向性に悩むことはあっても何も出てこないということはないですね。なので、こうやって物語に関わるお仕事をさせていただけているのは、とてもありがたいと思ってます。

 

――作品からインスピレーションを受けるということは、やはり作品の読解力が高くていらっしゃると思うのですが、そういった能力はどのようにして身についたと思われますか。

 

読解力があるかはわかりませんが、物語に音楽をつけていくには、やっぱり自分が演出家にならないと難しいなと思います。物語に対して自分がどう思うかということは、どうしたって音楽に反映されていくんですよね。物語全体を考えてどこが一番の山場かと考えて作っていかないと失敗するということも若い頃に学んだので、今はまず物語を自分の中で咀嚼して、理解してから音楽をつけるように心掛けています。この物語が最終的に何を訴えたいのか、一番訴えたいことがどこで溢れてくるのか。音響監督にご意見を伺った上でですが、絵の演出をされる方がいるのと同じように、音楽も同じように演出を考えてからつけないとうまくいかないなと、常日頃思っていますね。

 

――やはり普段からインプットを心掛けていたりもするのでしょうか。

 

劇伴すべてとなると数十曲作らないといけませんから、インスピレーションだけでは足りないこともあるので、多少はインプットするようにしてます。最近の劇伴や面白いと思った曲は、積極的に聴くようにしたり。

 

――音楽以外ではいかがですか?

 

基本的に本を読むのが好きなので、暇さえあれば本や漫画を読んでますね。最近は特に新しいものというより、続編ものの続きを読むことが多いんですけれど。

 

――そういったときはきっと、ホラーはお読みにならないんですね?

 

そうですね(笑)。どちらかというとほのぼのした作品や、あとは案外時代小説が好きなんですよ。それこそ宮部みゆきさんの時代物ですとか、畠中恵さんの『しゃばけ』シリーズですとか。

 

――宮部みゆきさんと言うと、ゾッとするようなミステリーもありますが……。

 

宮部さんのそういう作品は怖くて怖くて……でも何だかんだ言って読んでます(笑)。語り口が素晴らしいので、ついつい読んでしまうんですよね。

 

第3回は明日公開予定。お楽しみに!
 

劇場版『DEEMO』関連記事はコチラ

 

 

PROFILE
梶浦由記
作詞・作曲・編曲を手掛けるマルチ音楽コンポーザー。1993年にSee-Sawのコンポーザー兼キーボディストとしてプロデビュー。
現在は劇伴音楽を数多く手掛け、『鬼滅の刃』『ソードアート・オンライン』シリーズなどの話題作やアニメ作品以外にも、映画『アキレスと亀』(08/北野武監督)やNHK連続テレビ小説『花子とアン』(14)も担当している。
またアーティスト活動として、2003年より個人プロジェクトFictionJunctionをスタート。精力的にリリースやライブも世界規模で開催している。

 

 

<作品情報>

 

 

 

劇場版『DEEMO サクラノオト -あなたの奏でた音が、今も響く-

2022年2月25日(金) 全国ロードショー

 

【STORY】
音楽によって解き明かされていく過去と、この世界の秘密―――

ピアノが鳴り響く音楽学校。聴く者全てを惹きつける見事な旋律を奏でるのは少し影のある少女、アリスだ。人と交わろうとしない彼女だが、好奇心の強いサニア、優しいロザリアと出会い、徐々に変化が訪れる。

空から一人の幼い女の子が落ちてくる。記憶を失くしていたが、黒の紳士がDeemo ということはなぜか知っていた。Deemo がつま弾くピアノの旋律に誘われるように、少女は「アリス」という自分の名前を思い出す。そこには、彼女を優しく見守るぬいぐるみのミライ、くるみ割り人形、フワフワと宙に浮く匂い袋がいた。
ピアノの音色で成長する木が天窓まで届けば元の世界に帰ることができるのではと考えたアリスたちは、城に隠された楽譜集めを始める。そこでアリスは表情を隠した仮面の少女と出会う。「あなたなんて、嫌い」と言う仮面の少女とアリスの関係は?仲間たちとの楽譜集めの冒険。仮面の少女の心。そしてDeemo という存在の謎。時にアリスの頭をよぎる桜並木。

途中で止まる記憶の旋律――。
過去・現在・未来に大きな波紋を広げる音色が、次第にアリスの記憶の扉を開いていく。

 

【CAST】
 

竹達彩奈 丹生明里(日向坂46) / 鬼頭明里 佐倉綾音
濱田 岳 渡辺直美 イッセー尾形 松下洸平 / 山寺宏一

 

【STAFF】

原作:Rayark Inc.「DEEMO」

総監督:藤咲淳一

監督:松下周平

副監督:平峯義大

脚本:藤咲淳一、藤沢文翁

主題歌制作:梶浦由記

主題歌:Hinano「nocturne」(PONY CANYON)

製作・配給:ポニーキャニオン

 

【公式サイト】deemomovie.jp
 

【公式Twitter】@DeemoMovie

 

(C)Rayark Inc./「DEEMO THE MOVIE」製作委員会

続きはこちら!
  1. 1
  2. 2