現在「WEB声優MEN」では、大人気音楽リズムゲーム「DEEMO」を映画化した劇場版『DEEMO サクラノオト -あなたの奏でた音が、今も響く-』の公開記念リレーインタビューを展開中。第1弾は『鬼滅の刃』などの音楽も手掛けるヒットメーカー・梶浦由記インタビュー。主題歌に込めた想いを語ってもらった第1回に続き、第2回となる今回は梶浦の音楽制作の秘密や意外な素顔に迫る。(全3回)
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仕事で好きなジャンルと個人的に好きなジャンルは別
――梶浦さんは劇場アニメ、TVアニメ、ゲーム、実写……と多種多様なジャンルの作品を手掛けてらっしゃいますが、例えばゲーム音楽とアニメーションの音楽では、何か違いがあったりするのでしょうか。
そこの区切りはありませんね。昔のゲームには音数の問題などがありましたが、今ではそういった制限もないので、むしろどういう作品かという違いのほうが大きいです。
――ファンタジーやホラーといった、物語としてのジャンルのほうが重要ということですね。そういう意味のジャンルでは、特にお好きなジャンルというのはありますか?
仕事として好きなジャンルと個人的に好きなジャンルは全然違っていて、実はホラーや人が死ぬ作品は一切ダメなんです。ホラー映画はまったく観られませんし、小説でも人が死ぬ話は悲しくなってしまうので、人からオススメ作品を聞くときも「人が死ぬ話じゃないよね?」と確認するくらい(笑)。だけど音楽を作るときは、不謹慎に聞こえるかもしれませんが、そういう作品も結構好きなんですよね。すごく怖いホラーでも非常に悲しい話でも、音楽を作るときはまったく別の脳になって、楽しんで作っています。
――ではお仕事で、とっても怖いホラー作品の脚本を読まないといけないときなどは……?
脚本は平気です。でも映画の音楽を作るときって、同じシーンを百回も千回も見ながら作るんですよ。本当に同じシーンを何度も繰り返し見るので、あんまりグロいシーンだと、途中からはちょっと目をそらしながら……ということもあります(笑)。
――そうなんですか! 『魔法少女まどか☆マギカ(まどマギ)』のような作品も手掛けてらっしゃるので、ああいった世界観は平気なのだろうと思っていました。
いえいえ、自分でも『まどマギ』は本当につらくて、大泣きしながら見ていました。だからこそ、そのつらさを打ち消してしまわず、むしろ観ている方につらさがより伝わるような音楽にしようと思いながら作りましたね。
――でも確かに、音楽によってそれまで堪えていた感情が溢れ出たり、涙がこぼれたりすることは多いです。
私も「音楽って怖いな」とすごく思います。おそらく観ている方が思っているよりも、人間は音楽に感情をコントロールされているんです。「どんな音楽が流れていたかなんて、覚えてないよ」と思っていても。だから音楽のつけ方を間違えると、感情を違う方向に誘導してしまうこともあるので、特に劇伴音楽を作るときは絶対にミスリードしないように気をつけています。その作品が向かおうとしている方向に音楽を作らないといけない、作品の感情に沿った音楽の波を流していかなければいけないという責任感は、ものすごくありますね。
――音楽が感情をコントロールしてしまう力は、そんなにも大きなものなんですね。
自分で映像に音楽をつけてみたとき、「音楽によってこんなにも印象が変わるのか!」とすぐわかったんですね。これは恐ろしいことだなと。だから“そのシーンに音楽をつける意味”というのは大事にしています。すべてのシーンに音楽があるわけではなくて、無音のシーンもあるじゃないですか。その選択には、監督や音響監督が考える意味合いが必ずあるはずなので、ここでは一体どういう効果を求められているのかということはすごく考えて作ってますし、迷ったときは必ず確認しています。