いよいよ公開されるオリジナル劇場長編アニメーション『グッバイ、ドン・グリーズ!』。「男子ならではの行動力を描いてみたかった」といういしづかあつこ監督に今回語ってもらったのは、ドン・グリーズ最後の一人・ドロップ役の村瀬歩。『魔入りました!入間くん』などで活躍し、声域が広いことでも知られる声優だ。さらに監督がアニメーションに魅了されている理由や今後の展望についても伺った。(全3回)
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「性別の線引きを曖昧にしてみてください」
――トト(CV.梶裕貴)が東京の高校に進学してひとりぼっちになったロウマ(CV.花江夏樹)と意気投合し、ドン・グリーズに新しく加わったのが、アイスランドからやってきたドロップです。やんちゃで行動力溢れる少年ですが、小柄でどこか中性的な雰囲気もあるキャラクターですね。演じているのは村瀬歩さんですが、このキャスティングの経緯も教えてください。
「もしかしたらドロップには、割と最初から村瀬さんのイメージがあったかもしれません。でもドロップは『いかにも男です』って感じにしたくなかったんですね。ドロップが元々持っている中性的な感じを大事にしたかったので、オーディションでは女性の声優さんにも参加していただいて、色々な可能性を探っていきました。でも結果としては、村瀬さんの声を聞いたとき、やっぱりこの声だなと。村瀬さんが持つ中性的な感じ、年齢不詳な感じ。性別も年齢も感じさせない独特な色を持つ村瀬さんの声を当ててみたいなということで、ピックアップさせていただきました」
――ということは、アフレコでもその辺りを重視されたのでしょうか。
「キャラクターの設定としては“15歳・男の子”なので、最初は村瀬さんも15歳の男の子としてお芝居してくださったんですよ。ドロップって表情に感情がはっきりと出てくるので、それもあって、最初はすごくハキハキしたお芝居をしてくださったんですね。でもそうすると、ドロップの強さみたいなところが前面に出てしまうんです。クレバーで理性的でしっかりした少年に見えてしまう。だけど彼は裏に抱えているものもあるし、そこまで理性で考えていない部分があるはずなので、ちょっと柔らかさや抜け感がほしいなと。そこで、『ちょっと性別の線引きを曖昧にしてみてください』とお願いしました。『もしかしたら声変わりをしていないかもしれない、その絶妙なラインを探ってみてください』と。さらに、舌っ足らずに聞こえるクセを少しつけていただいたんですね。そうすると非常にかわいらしくなったというか、ちょっと守ってあげたい表情を時折覗かせる感じになって。いかにも主人公らしい『僕は夢を求めて冒険してます!』っていう強さとは少し違う柔らかさが生まれたと思うので、村瀬さんのキャラクターが非常に活きた瞬間を目の当たりにしたなと思いましたね」