自分のもてるものは全て出す思いで臨んだ

 

©︎サマーゴースト

Q.映像制作の過程で、大切にされたのはどんなところですか。


「色と構図かなと思います。それは僕がイラストレーターだからこそなんですが、イラストレーターは一枚の絵でいろんなことを説明しなくてはならないので、動きではなく、色の配列とか光の入り方、キャラクターの立ち位置にも別の情報を乗せるということをやってきたところがあって。それをアニメーションでもできれば、プラスオンされたものを作れると思っていました。あと、色と構図は、監督という立場から唯一完璧にコントロールできる領域なんです」


Q.本当に監督がこれまでの経験で、培われたものがフルに発揮されている作品だと思いました。とくに光へのこだわりは素晴らしいものを感じました。


「ただ、自分自身、光の扱い方自体は大きく変わってきているなと思っています。最初は綺麗だから、という単純な気持ちからは光にこだわっていたのですが、それがだんだん演出の手法としてすごく有効だと思えてきたんです。キャラクターにどれだけ影が落ちるのか、あるいは一切落ちないのかということだけでも、状況を示すことができますし、演出としての光が僕は好きだったんだなと。ですので、『サマーゴースト』を完成させて、影を描かなくてはいけないなという気持ちにたどり着いているところです。光を強くするというのは決してどんどん白くしていくわけではなくて、影の黒さを締めれば光が強く見えたりという相互関係にあるもの。そこで、影の解像度をもっと高くできれば、それは光の表現が広がるところがあるなと思いました」


Q.光と影の描写が表現をともなって、ドラマとしての映画に結実していました。


「例えば、光の温度、光の色でいまどれだけ優しいシーンなのか、冷たいシーンなのかというものを伝えていきたいという思いがあります。それがイラストレーターであり、アニメーターである僕が、アニメーションを作る意義でもあると思っていて。ちゃんと色にメッセージがある作品でなければ、たとえ見栄えがうまくいっていたとしたしても、僕が作ったものと胸を張って言えないでしょうし、自分のもてるものは全て出すという気持ちでこの映画に臨みました」

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