■小悪魔代表セリフ「わざとだよ?」の破壊力
2人目は『NANA』の川村幸子。同作は『Cookie』(集英社)で連載された矢沢あい氏による漫画で、ロックバンドのボーカルを務める大崎ナナと、彼氏を追って上京した小松奈々という“2人のナナ”が同じアパートで暮らしながら恋や夢をつかんでいく物語(現在は長期休載中)。
幸子を象徴する「わざとだよ?」はあまりにも有名。このセリフ自体は知っていても前後のシーンを知らないという人のために説明すると、幸子は奈々(ハチ)の彼氏・章司のバイト先の女の子で、恋人がいると知りつつもひそかに章司に恋をしていた。
バイト終わりは、いつも終電に駆け込むためにダッシュしていた2人だが、この日は幸子がなぜかヒールの高い靴を履いており、走っているうちに案の定脱げてしまう。幸子は先に行ってと言うが、そうもいかない章司は幸子を待ち、結果一緒に終電を逃すことに。「走らないと終電逃すの分かってて、なんでそーゆー靴履くかな」と困った章司に、3コマの沈黙のあとで幸子が発したのが、この「わざとだよ?」である。特筆すべきは、このときの幸子の表情だ。階段下から少し上目遣いでほんのりほおを赤らめ、あひる口で発せられたこの言葉には「この言葉でこの男は落ちる」という幸子の確信すら感じられる(と筆者は思っている)。その通り章司は見事、このセリフのあとに「かぁっ」と高ぶり、二股関係へと突入するのだった。
ハチの立場からすればたまったものではないが、30代女子としてはこの幸子の行動に、モテ女子としてのレベルの高さを感じるというか、一種の尊敬の念すら抱いてしまうのもまた事実。行動力に加え、自分の魅力を知り尽くしているからこそ言えるセリフのあざとさは見習うべきものがある。