■「6人目の戦士」「パワーアニマル」が視聴者に与えたインパクト

 そして、ガオレンジャーを語るうえで欠かせないのが、「6人目の戦士」の存在と、「パワーアニマル」だ。

 物語中盤、狼鬼(ロウキ)と呼ばれる千年前に封印された謎のオルグが登場する。敵ながら狼、シュモクザメ、ワニのパワーアニマルを操りガオレンジャーを苦しめていたが、正体は1000年前のガオの戦士。敵の呪縛から解放されてガオシルバーとなった後も「オルグあるところに風が吹き、その風は必ず俺を呼ぶ」と、その名の通り一匹狼な振る舞いをするが、このクールさに当時の子どもだけでなく、母親はシビれた。

 このガオシルバーこと大神月麿を演じたのが、若き日の玉山鉄二。出演するヒーローショーがファンのお母さんたちでパニックになるほどの話題を呼び、同年の『仮面ライダーアギト』と並び本格的に人気を集め、“特撮ヒーロー=若手イケメン”というイメージが形成されたのも、この年だ。

 また、ガオレンジャーとともに戦う「パワーアニマル」も注目だ。本格的にCGが取り入れられ、ミニチュアでは不可能だった表現や、ロボット(劇中では精霊王)に変形するシーンがふんだんに描かれた。現代の戦隊ではおなじみの「腕や足をいろいろなサブロボと交換する」というアイデアも、ガオレンジャーで玩具的な意味では初めて本格的に導入されたのだ。

 盾と剣に変形する「ガオエレファント」や、それぞれ火炎放射と冷凍光線を出す腕パーツになる「ガオベアーとガオポーラー」などなど、多くのパワーアニマルたちが年間通して登場し、ストーリーや戦闘シーンを盛り上げた。これ以降、1か月に1体ほどのペースでサブロボが登場するのが、フォーマットとなっている。

 単純明快かつ老若男女楽しめるストーリーが高く評価されて、最高視聴率11.5%という20年ぶりの同時間帯の視聴率更新を果たしたほか、1995年の『超力戦隊オーレンジャー』以来となる劇場版も製作された。9月の上映だったが、現在まで続く『夏映画』の誕生である(今年はコロナウイルスの影響で21年新春に延期)。

『鬼滅』や、初期の『平成ライダー』に比べるとグロテスクな要素も少なく、初心者向けの作品ともいえる。先述のように来年で20周年を迎えるほか、20年11月からニコニコ動画が公式から毎週更新3日間無料公開で配信を行っている。空前の鬼ブームを迎えた2020年。『ガオレンジャー』20周年を迎える2021年に彼らの“鬼退治”を楽しんでみてはいかがだろう。(特撮ライター・トシ)

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