■パームボールと天秤打法を教えてくれた『第三野球部』

週刊少年マガジン』に連載されていた、むつ利之先生の『名門!第三野球部』。野球の名門桜高校の一軍、二軍の下の三軍、通称第三野球部が落ちこぼれから這い上がっていくストーリー。卑屈ないじめられっこ、桜高の落合と呼ばれた元一軍スラッガー、お寺の息子、双子、太ってることをいじられるとキレるシンプルデブキャラ、長髪のイケメン、かわいいマネージャーと、個性豊かな部員たちが本当に面白かった。

 一軍との試合でピッチャーをしていた主人公・檜あすなろは、ある日、手にできた潰れたマメをかばうように投げたボールがたまたま妙な変化をした。そのときの握りが偶然にもパームボールの握りだったのです。これを読んでたやつ、翌日全員パームボールの投げ方を真似ていました。そして第三野球部といえばもうひとつ、石井の天秤打法でしょう。これも読んだ奴は全員真似してました。主人公がプロ野球にいくまで描いてくれている数少ない漫画じゃないでしょうか。

■高校野球をお金で描いた名作

『ドラゴン桜』でも知られる三田紀房先生の『砂の栄冠』。ざっと説明すると、ある高校野球のキャプテンに1000万円を与え、そのお金を使って甲子園に行かせるというストーリーです。今までになかった角度で高校野球を描いています。「春の選抜はハツラツとした礼儀正しい高校生を演じれば出場できるチャンスがある」や「甲子園ではどれだけ客を味方にできるかが勝負」「ブラスバンド部にオリジナル曲を作って応援してもらう」など、技術面以外で甲子園を有利にする戦い方が沢山出てきます。必見です。

 あとは魔球っぽい球種を扱った最後の漫画かもしれない『わたるがぴゅん!』。沖縄出身の主人公わたるが繰り出すハブボール。なかいま強先生独特のギャグも面白く、観客が面白いヤジを飛ばすというのもなかいま強先生の特徴です。先生の作品は他にも相撲漫画の『うっちゃれ五所瓦』やゴルフ漫画の『黄金のラフ』も最高に面白いです!

 水島新司先生の抑えのピッチャーを主役にした漫画『ストッパー』も印象に残っている作品です。主人公は能力的にはプロとしては普通なんですが、配球の駆け引きで打者を打ち取っていくんです。ダーティーな部分もあって、ヤスリでボールに傷をつけたり、ポマードをボールに塗りつけたり(そのせいで球に微妙な変化がかかる)して打者を打ち取っていました。もちろん不正行為なので、審判や相手チームもそのボールを押さえようとするんですが、その証拠をつかませないようにするところまで漫画で描いていました。勝負に勝つために手段を選ばない、この作品を読んでいたときはまだ小学生ぐらいだったので「なんだこの卑怯な主人公は!」と思って読んでいました(笑)。

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