公開中の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は今や社会現象と言っても過言ではないほどの大ヒットを記録。吾峠呼世晴氏によるコミックスの最終巻(23巻)の発売が12月4日と迫る中、さまざまな芸能人たちがSNSで連日のように「鬼滅コスプレ」を披露。子どもから大人まで、かつてないほどの盛り上がりを見せている。
しかし『鬼滅の刃』には鬼が人を殺したり、鬼殺隊の剣士が鬼の首を斬るようなシーンもあるため、その部分だけがクローズアップされてネガティブなイメージで取り沙汰されることも見受けられる。たしかに作中にはそういう残酷に見える描写があるのは事実だが、この作品の本質はそこではないことは『鬼滅の刃』の物語を知る人であれば周知のことだろう。
そこで今回は主人公の竈門炭治郎の飛び抜けた性格の良さや前向きな部分など、物語を知らない方にもプラス要素になりそうな点について言及したいと思う。
※以下、テレビアニメにもなっている「那田蜘蛛山編」に関する一部ネタバレが含まれているので気になる方はご注意ください。
■健気で心優しき主人公・炭治郎
本作の主人公・炭治郎は、15歳の少年ながら家族を養うために家業の炭焼きで生計を立てていた。父を亡くして一家の大黒柱となった長男の炭治郎は、まだ幼い弟や妹たちに「お腹いっぱい食べさせてやりたい」と言い、雪の日も炭を売るために働きに出ていた。
大正時代が舞台だけに、この年頃から働くこと自体は珍しくないのかもしれないが、炭治郎はつねに弟や妹たちのことを思いやり、そのうえ「生活は楽じゃないけど幸せ」と本気で感じていた部分からも炭治郎という人物像が見えてくる。
そんな炭治郎を象徴するモノローグに「俺は長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できなかった」というセリフがある。どんなに痛いときでも騒がずにグッと我慢し、長男として家族に心配かけまいとするけなげな情景すら浮かんでくる、実に炭治郎らしい表現だと思った。
個人的な話になるが、このセリフは『鬼滅の刃』が大好きな知人の子どものお気に入り。その子は炭治郎と同じ長男で、実際にマネをして「僕は長男だから我慢する」と妹に何かを譲ったりするという話を聞き、ほっこりさせられた。
これが珍しい例なのかは分からないが、炭治郎というキャラクターの存在は『鬼滅の刃』が大好きな幼い子どもにも間違いなく好影響を与えていると感じた。
そして炭治郎の優しさは仲間や一般市民だけでなく、敵対しているはずの鬼に対しても向けられる。