こんにちは、声優の徳井青空です。2020年のユーキャン新語・流行語大賞のノミネートが発表された。なんだかんだで毎年日本中が楽しみにしているように感じる。もちろん私もその1人だ。
個人的にはやはり『鬼滅の刃』が大賞なのではと予想している。今ではその作品名を知らない人のほうが少ないだろう。アニメ漫画ファン以外の層にも拡大し続ける“鬼滅の刃旋風”。流れ的には鬼滅の刃ファンの総称がつけられて、安室奈美恵さんのファン総称「アムラー」のごとく「キメラー」なんて呼ばれて、夕方のニュース番組で「今話題のキメラーって何!?」と特集されそうな雰囲気だったが、そんな暇もないぐらいの速度で社会現象となった。なんとなく人々は、カテゴライズしたうえ、さらにそのくくったものにも名前をつけるのが好きなように感じる。○○女子、○○世代など、みんなが多くのカテゴライズされた肩書きを持ち、名乗ることで、より強い仲間意識や共感につながるのではないかなと思う。
『鬼滅の刃』が話題になっていく中、特に小学生など子どもたちからも熱い支持があると聞いたときは驚いた。深夜にアニメが放送されていたこともあり、子どもたちはどこで作品を知ったんだろう? と感じたからだ。いくら作品が面白くてクオリティが高くても、まずは多くの人に見てもらわないと何も始まらない。するとどうやら、動画配信サービスでの視聴が多いとのこと。子どもたちと作品が直でつながる時代になっているのである!
私が子どもの頃はもちろん動画配信サービスなんてものはなく、アニメはテレビから流れてくるものがすべてで、それは友だちも同じで話題もその範囲だった。親による「早く寝なさい!」の一蹴で、視聴時間も非常に限られている。見たことのない作品はレンタルビデオで借りるしかないのに、「なぜそんな知らない作品を借りるのか?」と親に聞かれたときプレゼンすることを考えるとまあまあ面倒で、結局大人しく録画して同じアニメを繰り返し見るか、掘り出し物があるかも知れないとチャンネルを合わせた千葉テレビで『キテレツ大百科』や『赤胴鈴之助』を見るしか選択肢はなかった。
ところが現在は子どもが1人でも作品を選んで再生できるようになっている。さらに、その子どもの視聴者も「1人の視聴者」として作品を評価できるようになったことが大きいのではないかと考えている。
濃いアニメファンの「1再生」もアニメ専門家の「1再生」も普通の小学生の「1再生」も同じ評価として反映されるのだ。大人が再生しても子どもが再生しても同じ1再生。動画配信サービスの普及で視聴者が広がっただけでなく、作品を評価する対象も広がったと言えるだろう。