■高難易度でプレイヤーを攻める初代ペルソナ
そして、このシナリオの結末はネタバレできませんが、初めて見たときは余韻がハンパじゃありませんでした。彼らに降りかかった困難を乗り越えたことで得たもの、その戦いの意味、それらすべてがキャラクターを通してプレイヤーに伝わってきます。「ああ、ペルソナやったなあ……」という充足感が待っていることでしょう。
ちなみに「ペルソナ様」の最中のコツコツコツ……という足音も恐怖心をあおるような演出に一役買っていますが、PSP版のペルソナでは足音がカットされています。そこだけ見ても、両作品の雰囲気の違いが分かるかなと思います。
さあ、この冒頭を聞いて「ちょっとシナリオ気になる! やってみたい!」と思ってくださった方に向けて、なぜこんな面白そうなRPGが「遊びづらい」と言われているのかについてご説明いたしましょう。
まず挙がるのが、そのエンカウント率の高さです。PSP版では改善されましたが、エンカウント率が高い上に、戦闘時の読み込みに時間がかかり、さらにペルソナを自身に「降魔」させるたびにアニメーションが入るため、非常にテンポが悪くなってしまっています。
コマンドRPG派である私からすると、「おっせえな!」というストレスはありませんでしたが、アクションゲームや昨今のスピーディな展開のRPGが好きな方には合わないかもしれません。それはもう仕方ないのですが、テンポが悪くともじっくり腰を据えて戦闘を楽しんでいただきたい点がいくつかあります。
1つ目は、敵の悪魔との「会話」です。戦闘開始時、その敵と戦うか話すかを選ぶことができるのですが、この会話が楽しいんです本当に。これはメガテンシリーズから引き継がれた要素で、その敵を「仲魔」にしてパーティに入れることができたメガテンシリーズとは違い、ペルソナではその敵たちを自身に「降魔」させて戦うのですが、『女神異聞録』では降魔させるペルソナを作るために必要なスペルカードをもらえるようにうまく会話することが話す目的となります。
会話にはたとえば、マークは踊ったり、ホラを吹いたり、おぼっちゃまのなんじょうくんは演説したり、物で釣ったりなど種類があり、敵の性格に合わせて有効な手段を用いて、効果的な会話を導き出していくのですが、これがなかなか難しい。怒らせて戦闘になってしまうこともしばしばあるのですが、どうせ戦うはずだったし、と考えれば実質プラマイ0です。どんどんチャレンジしましょう。
このスペルカードを集め、ベルベットルームという場所で合体させることでペルソナを作ることができます。ペルソナはキャラごとに3体まで設定することができ、それぞれの能力値に補正もかかります。
ただし、属性の相性やレベルが設定されているので、いきなり強いペルソナをつけることはできません。会話ばかりして敵と戦闘していないとペルソナをつけられないし、そもそもレベルを上げないとこのゲーム、敵が相当強いのでとても苦労します。まあ中には、ちょっとレベル上げたところで結局苦労させられる敵もいますが。(モー・ショボー、お前だよお前)
これを「大変」ととるか、「やりこみがいがある!」ととらえるかは人それぞれかと思いますが、「やりこみがいがある!」と思えた方は本作をめちゃくちゃ楽しめると思います。テンポの悪さなど気にならないほどに。
さて、遊びづらさの要因としてエンカウント率とテンポの悪さを挙げましたが、もう一つクセのある「貢献度システム」というものがあります。これはその戦闘ごとに、貢献した人ほど経験値が多くもらえるというもので、「行動回数が多いキャラが超得する」システムとなっています。裏を返せば、素早さの低いキャラクターは意識しないとなかなか経験値がもらえないので、パーティ内で格差が生まれてしまうこともしばしばあり、多くのプレイヤーが「マークのレベル上げ」に苦心したかと思います。
ステータスの割り振りができる主人公と違い、仲間たちは成長パターンがいじれないのでなかなか難しいのですが、そこはもう「愛」です。一生懸命、育ててあげましょう。私はどんなに初期ペルソナが弱くとも、育てづらくともマークが好きです。あんないいやついませんよ。
さらにこのゲームならではの多岐にわたる属性や悪魔の種類、状態異常など、覚えることも多いのもありなかなかとっつきづらい点は多いですが、そんな「遊びづらさ」を吹っ飛ばすほどの魅力が詰まっているのがこの『女神異聞録』なのです。