次にくるマンガ大賞候補、30代に刺さるラブロマンス『九龍ジェネリックロマンス』の魅力【別冊なかむらりょうこ・コラム】の画像
別冊なかむらりょうこ

 みなさまこんにちは! 少女漫画芸人の別冊なかむらりょうこです! 今年の梅雨は、ちゃんとした梅雨。雨が降る日々が続いていますね。なかなか身体を動かして運動することができない日々。しかし、この運動なら皆様できるのではないでしょうか。“キュンキュンによる心臓の運動”または“驚きによる心臓の運動”。なんと、そのどちらもが同時にできる漫画があるんです……!

 大注目漫画!『九龍ジェネリックロマンス』をご紹介いたします! 物語を越えた極上の“ロマンス”。でも1巻最後に気をつけて……ラストですべてが……。

『九龍ジェネリックロマンス』は、昨年11月より集英社『週刊ヤングジャンプ』で連載スタートした眉月じゅん先生の作品です。7月には2巻が発売されました。眉月先生が、2018年まで連載していた前作『恋は雨上がりのように』(小学館)は、一見クールな美人女子高生・橘あきらがバイト先のさえない45歳の店長を好きになるという28歳差の片想いの話。しかし、そのインパクトとは異なり、作中に終始流れる懐かしさと、小説のような余韻の美しさがありました。

 読者層の男女の垣根を超え、大きく話題となり、2018年1月よりテレビアニメが放送され、また、同年5月には小松菜奈さんと大泉洋さんで実写映画化されました。

 そして眉月先生の待望の新作がこちらの『九龍ジェネリックロマンス』。

 この漫画……言いたくても言えないことが多いんです! ただ、言えることは……まず1巻を最後まで必ず読んでほしいということ……! 必ず虜になります!!

■実在した九龍城砦が舞台

 今回は、設定となる舞台がまず、非日常です。舞台は、かつて香港に実際に存在した、東洋の魔窟と通称される巨大なスラム街・九龍城砦。中国大陸の難民の温床となり、無計画な建設のため九龍城砦の街は迷路と化し、「一回入ると出て来れない」と言われていたそうです。

 私は、今回で初めて九龍城砦を画像検索で見たのですが、驚きました。ビルが敷き詰められ、積み重なっているのです。

 行政権が及ばず、売春や薬物売買が行われ、無法地帯と化し、結果1993年から1994年にかけて取り壊し工事が行われ、現在は存在しておりません。眉月先生は中学生のときに遊んだゲーム「クーロンズゲート」で九龍城砦を知り、だいぶ前からこの地を題材にした漫画の構想を立てていたそう。

 眉月先生が訪れた台湾の光景も織り交ぜながら構成されたという、漫画内に描かれる九龍は、廃墟好きにはたまらない街並みとなっています。そしてそんな非日常な場所は、眉月先生の手により、より非日常に。ノスタルジーあふれる街並みから、わずかに見える空に浮かぶ8面体の物質。

 漫画の中では、「人類の新天地となるジェネリック地球(テラ)」と語られ、いまだその真意は分かっていません。今はない過去のものに描かれる未来の映像。唯一無二の舞台設定に引き込まれます。

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