■2人を囲む魅力的なキャラクターたち
『僕と君の大切な話』では、会話に至る前の、気持ちや葛藤も丁寧に描かれています。
さっきまで笑っていたのに今は何か落ち込んでいる……そんなのぞみんに対して思う東くんの「あれ? 俺なんかしたのか……?」と、ふだん見ることのできない異性の心のうちを見ることができるのです。それは主人公二人に限ったことではありません。
初めての恋心に、自分の感情が手に負えず、つい言葉足らずにブチ切れたように人に恋の相談をしてしまう、のぞみんの親友・はまりん。なんの努力もしていないのにこんなにチヤホヤされていいのかと悩む学年一の美少年・環。女の子に興味津々の男子と、自分たちには興味を向けられていないため辛辣に男子を扱う女子が入り乱れる東くんのクラスメート。東くんの女性への偏見的見方を凝り固める原因となった4人の美しい叔母。
私、この人が一番共感できる……というキャラクターも見つかるはずです。
■文学的言葉の数々!
この物語で重要となってくるのが、東くんの創作活動。
文芸部からもアドバイスを求められ、本読みな東くん(といっても勉強は苦手)は、自身も小説を書き始めます。彼の創作における葛藤は、何かを作り出す人々にとって胸に響くものがあります。また、話が噛み合わないのぞみんに対しても、
「たとえば僕と君が違う星の人間だとして それをつなぐのは言葉だろう
だったら こちらから閉ざしてしまうのは あまりにももったいない by東司朗」
幸せが怖いと言ったのぞみんに対して、
「でも不安の大半は杞憂で終わるし 心配ごとは起こってから考えればいい
今ある時間を楽しみたいと 僕は思う(by東司朗)」
と、なんだかホッとするたちに心が洗われる気分になれるのです。
「違い」を楽しみ、「会話」で「関係」を築く。序盤は一話一話で完結しており、大変読みやすくなっております。