ぶりぶりざえもん役・神谷浩史「子どもが見たいと思うものを映す鏡」『映画クレヨンしんちゃん』の魅力語る
神谷浩史
全ての写真を見る

 自由奔放な“嵐を呼ぶ5歳児”野原しんのすけの活躍をギャグ満載で描く国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』。この劇場版第28弾『映画クレヨンしんちゃん激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』が近日公開となる。

 本作には個性豊かなキャラクターが多く登場するが、なかでも人気の“ぶりぶりざえもん”は2016年より神谷浩史が声を担当している。新作劇場版の公開を控え、今回は神谷にロングインタビューを敢行。“救いのヒーロー”を演じるうえで、神谷は何を大切にしているのか。そして、国民的アニメに携わるなかで時代の変化をどう感じているのか、インタビューとともに、作品の魅力にも迫る。

  ※  ※  ※

『クレヨンしんちゃん』の新作劇場版第28弾は、ラクガキをエネルギー源として空に浮かぶ王国「ラクガキングダム」が、主人公・しんのすけたちの住む地上・春日部へ侵攻を開始するところから物語は始まる。それを阻止するためにしんのすけが勇者に選ばれ、“ほぼ四人の勇者”とともに奮闘!そして“ほぼ四人の勇者”の一人となるのが、しんのすけのラクガキから生まれた二足歩行の豚「ぶりぶりざえもん」だ。“救いのヒーロー”として登場するが、ときに逃げたり、強い敵に寝返ったりと、はちゃめちゃな行動をするのもこのキャラクターの魅力のひとつ。その声を担当する神谷浩史が、国民的アニメに携わる中で見えたものとは――。

写真/小嶋淑子 文/大曲智子
ヘア&メイク/NOBU(HAPPS’)
スタイリング/村田友哉(SMBInternational)
撮影協力/BACKGROUNDSFACTORY

■アニメーションは子どもたちのもの

――ぶりぶりざえもんにキャスティングされる以前、神谷さんの中で『クレヨンしんちゃん(以下、しんちゃん)』という作品のイメージはどんなものでしたか。

神谷 『しんちゃん』のアニメが始まったのは僕が高校生の頃なので、そこまで馴染みのあるものではなかったんですよね。この業界に入ったときから僕は、アニメーションは基本的に子どものためのものだと思っています。『しんちゃん』はそういう意味で、ずっと王道をやっている作品。親に怒られながらも、子どもがすごく楽しみにして観るアニメ。親公認で観られるアニメとはちょっと違う、子どもが好きな王道のアニメーションという印象でしたね。

――その中でも、『しんちゃん』の劇場版は、大人が観ても感動できる作品というイメージになっていきましたよね。

神谷 テレビシリーズが劇場版になると、レギュラーのキャラクターたちの普段とは違う一面が見られて感動するというのは、『しんちゃん』に限らず、劇場版のお約束ですよね。だけどこの作品は、テレビシリーズとやっていることは変わらないんです。そこがすごく好感が持てます。しんのすけは、劇場版でも相変わらずの自由奔放な幼稚園児でいてくれていますから。

――塩沢兼人さんが演じられていたぶりぶりざえもん役を、神谷さんが2016年に引き継がれました。その際は大きなプレッシャーがあったそうですが。

神谷 兼人さんはぶりぶりざえもんの役を5年ほどやってらっしゃいました。僕が引き継いだのが2016年だとすると、今年がちょうど4年目になるんですよね。兼人さんがやってらした年数にちょうど追いついた年に、こういった劇場版に出させていただけることが、すごくありがたいなと思っています。もちろん、兼人さんのぶりぶりざえもんはレジェンドだし、僕もそう思っています。兼人さんが急逝されて、ぶりぶりざえもんは16年間しゃべらなかった。だけど、もう一度、しゃべるぶりぶりざえもんを子どもたちに見せようと思ってくれたんでしょうね。そこに自分の声を当てるというチャンスをもらえたことは、やはり僕としてはプレッシャーでした。

――それでもチャレンジしたのはなぜだったのでしょう。

神谷 先程もお話した通り、アニメはもともとは子どものもの。子どもたちの知らない事情によって彼はしゃべらなかったけれど、もう一度声を当てるというのは、キャラクターをもう一度子どもたちに返すということなんだと思いました。子どもって順応性があるから、そんなことは全然気にせずに受け入れてくれたと思います。子どもたちのところに戻ったキャラクターに僕の声が乗っているのは、すごく感慨深いことですよね。とくに兼人さんは同じ事務所の先輩だったので、何より当時を知る弊社のマネージャーたちがとても喜んでくれました。僕はプレッシャーに負けないように、おもしろいものを届けられるようにということだけで精一杯だから、周りの声を聞いてる余裕がないんですけど。あまりにも先代が偉大すぎるので、それとは比べようもないというのが僕の正直なところです。

  1. 1
  2. 2
  3. 3