■表と裏でヒーローショーを支えるプロたち
第2位は、オーレンジャーショーの「オーブルー」を演じていた喜多川務さんです。
喜多川務さんといえば中国拳法の達人で、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』では中国拳法指導までされているすごい方ですが、オーブルーではそれを生かし、棒術を使って戦っていたんです。僕はこの棒術観たさに何回も何回も同じショーに通いました。
ある日のショーのこと、オーブルーの棒がステージにぶつかってしまい、棒がどこかに飛んでいってしまうというアクシデントがありました。その瞬間、会場が明らかにザワつき、客席にいた僕も「え、どうするの? どうするの?」「武器ないじゃん! どうやって戦うの?」と心の中で叫んでいました。そのアクシデントは、時間にするとわずか1秒ぐらいだと思いますが、次の瞬間、オーブルーがそのまま殺陣を続けたんです。しかも素手で。
棒を持っていた手をとっさに素手に変え、しかも棒術のように両手を上手く使いキレイに舞い、なんなら棒術のときよりも大きく動いて、演出を急遽変えてパワーダウンした感じを一切出さず戦いきった喜多川さん。あれ? もともと、棒は落ちる演出でした? と思うほど見事な殺陣でした。シビレました。プロというものを見せてもらった瞬間でした。
そして第1位は「補助」です!
特に奈落落ちを迎えるマットの補助、これがすごい。下っ端だった自分もやりましたが、もちろん手が空いてる先輩方もやります。分厚いマットの上にさらに一畳分ぐらいの柔らかいマットを使うんですが、そのマットを8メートル37センチ上から人が落ちてくる瞬間に、落下地点に瞬時にスライドさせて持って行くんです。
初めてマット補助を見せられ、やれと言われたとき、怖くて怖くて仕方なかった。もしマットを出す位置やタイミングを間違えたら落下時の衝撃が大きくなります。俺のミスで人が事故に遭うかもしれないと思ったらもう恐ろしかったです。だからこそ厳しい現場ですし、緊張感がなければ成り立たない。演じる側も、補助を信用してそこに飛び込んでくるんです。
僕はこの奈落落ちの補助をする先輩方の動きに毎度見入っていました。あまりにも慣れた手つきでササッとやってしまう。すごいな、カッコいいなと思いました。表には出ていませんが、こうした裏でショーを支えている人がいるから、表が輝くしカッコよくなるんだなと痛感しました。客として通っていた時代、たった1枚の壁の向こうでこんなすごいことが行われていたなんて思ってもみなかったです。とんでもない現場に来ちまったなと思ったのと同時に、この人たちと同じところで仕事が出来てるんだなって嬉しさもありました。それを中学3年生で味わえたことは本当に人生の宝物だなって思います。
今、人生で大変なことや辛いことを味わうとき、JAC時代の過酷さに比べたらマジで余裕になれるんです。もう1回あれやるか?って言われたら、やりませんが(笑)。いや、頑張るかも!