■緊張感の中、帰宅するのは深夜1時

 千葉の実家から後楽園ゆうえんちまで通っていた僕は、朝の4時30分に起きて2時間かけ現場に到着。警備員に鍵を貰い、まだ誰もいない園内を移動し(途中のトンネルが真っ暗でとにかく怖い)野外劇場の鍵をすべて開けて、先輩の楽屋掃除から1日がスタートします。

 その後は衣装の準備、ステージのマットの準備など済ませ、先輩が到着するのを待ちます。そこからリハ、本番、先輩のお昼の買出し、ショー終了後の片づけ、洗濯、すべて終わる頃には夜の8時を回ってました。そこから稽古の日は移動して体を酷使。帰宅するのは深夜1時でした。当時、新人の僕がよく言われてたのが「おまえは、歩くな」でした。とにかく止まるな、自分で仕事を探してやる、止まってる暇なんてない、ってことです。

 当時はよく分からず、ただガムシャラにやってあっという間に時間が過ぎていくという感じでした。つらくて毎日辞めたかったです。けど、怖かった先輩が少しずつ話し掛けてくれるようになったり、あまりしゃべらなかった先輩がちょっかい出してくれたりと、心に少しずつ余裕が出てきました。今の時代だったら完全アウトな感じだとは思いますが(笑)。けど僕は全然恨んでなんかないですし、後悔もしてません。危険な現場なので、気のゆるみが死につながります。何より、あの緊張感の中で切磋琢磨することこそが、レベルの高いすばらしいショーを続けられる理由なんだと思います。

 さてそんなわけで、野外劇場で実際にステージの裏も表も見てきたしいはしジャスタウェイが、「野外劇場のここがスゴい!」と思ったベスト3をお送りいたします。

 まず第3位は大藤直樹さん。大藤さんはテレビでは『鳥人戦隊ジェットマン』のブラックコンドル、『五星戦隊ダイレンジャー』でリュウレンジャーを演じていましたが、僕が出演していたメガレンジャーショーではメガブラックを担当されていました。この大藤直樹さんのアクションがとにかくカッコ良かった!

 休憩中、ある先輩に「おまえ、大藤さんのアクション見たらチビるぞ」と耳打ちされたんですが、舞台に上がる前からファンだった僕は、心の中で「知っています。ショーの最前列でずって観てきましたから」とつぶやいていました。大藤さんはどんなキャラを演じても大藤さんなんです。いつでもカッコイイ。キムタクです。キムタクがどんな役をやってもキムタクのように、大藤さんはどんな役をやっても大藤さん。「大藤レッド」とでも言いましょうか、役を凌駕してしまうんです。カッコいいから遠くから観てても目立っちゃうんです。

 そんな大藤さんは舞台裏でもカッコいい。ある日のメガレンジャーショーの舞台前、ステージ裏で1人でスタンバイしてガッチガチになっている僕の体に、何かが当たる感覚が……。パッと横を見たら、大藤さんが武器の先っちょで僕をツンツンして「緊張してる?緊張してる?」ってふざけながら言ってきたんです。

 1番下っ端で余裕もなく、話し掛けてくる人もいなくて、孤独だった僕。惚れてまうやろ!! ジャパンアクションクラブのキムタクにそんなことされたら惚れてまうやろ!!

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