私はアフレコの台本が好きだ。
ザラザラとした手触りの画用紙のような表紙は、このアフレコ台本以外ではあまり見かけることはない。表紙の紙は何色かパターンがあるようで、同じ作品でも話数ごとに色が変わっていることが多い。確かにすべて同じ色の表紙になると、先週の台本なのか今週の台本なのかが、パッと分かりにくいというのもある。
表紙には作品のタイトルが印刷されただけのシンプルなものから、監督さんたちがラフに描き下ろしたように見えてクオリティの高いイラストが印刷されているものもある。声優を含むスタッフしか使わないアフレコ台本に描きおろしイラストが描いてあるなんて、なんと豪華なことか。このサービスイラストが見られるだけでも声優になって良かったと感じる。
手になじむ素材の、硬くも柔らかくない表紙。受け取るたびに、どんな物語が始まるのかワクワクする。声優があらかじめ作品の脚本を知ることはほとんどなく、初めて物語に触れるのはこのアフレコ台本を開くときだ。
台本の中の紙も、ページをめくる音がマイクにのらないよう、柔らかく、少しザラついたものが多い。真っ白なときもあるけど、わら半紙を思い出させるような、ほんのりくすんだ色味。次のページがちょっと透けて見える厚み。この紙から声優さんたちのお芝居が生まれる。音響監督さんからキャラクターや状況の補足をいただくこともあるが、基本的にはこの台本からの情報だけでお芝居をするのだ。演技力だけでなく読み取る力も必要だと言える。