■次々と金田に襲いかかる理不尽な選択

 また次に向かうコンビナートでは突如暴漢に襲われ、「にげる」「とびかかる」「なぐる」「かがむ」の中から正しい行動をとらないとまたも即死。「かねだしょうねんは死んでしまいました。」とゲーム終了が宣告されます。

 その後もラボの黒服に銃で撃たれる。別の方向に行こうとすると、置いてあった手榴弾が爆発して死ぬ。行くべき場所でないところへ行こうとすると、いきなり刺されて死ぬ。正解でない選択肢を選ぶと、こけて死ぬ。銃を向けられているなど、緊迫したシーンで「おちゃにさそう」「おどる」などふざけた行動をすると逮捕されて無論ゲームオーバーです。選択肢が10あったとして、「7即死、2選び直し、1正解」というぐらいに鬼のバランス。

あるときは敵対する暴走族に襲われ
またあるときは謎の黒服に撃たれる
金田らしい行動に思われるが……逮捕

 映画のストーリーに忠実に進行してはいくので、『AKIRA』を何度を見た人は軽くクリアしていけるのですが、AKIRAを知らない人はもちろんのこと、映画を見ていない人は、なんで死ぬのか意味すら分からず、完全に置いていかれます。

 今作が発売された同じ年の11月に『ディジャブ』というアドベンチャーゲームがリリースされているのですが、そちらも即死系で名高いソフトです。こちらも進む方向によっては穴に落ちていきなり即死したりといった理不尽な死のオンパレードでしたから、当時のキッズたちは随分苦労させられました。

 前述の『ディジャブ』のほかに『悪魔の招待状』『シャドウゲイト』などなど、この系統、俗に言う「即死系アドベンチャーゲーム」はけっこうありますが、一応これらは推理の要素があったり、ヒントをもとに選択肢を選ぶことができます。『AKIRA』のようにヒントもなく、ここまで理不尽に死にまくるのはとにかくまれ。原作のストーリーを知らないと先に進めないという点では、「あんこうのさばき方を知らないと死ぬ」ファミコン版の『美味しんぼ』に通ずるものがあります。

名シーンはファミコンで見てもかっこいい

 とはいえ、今作は名シーンの数々が美麗なグラフィックで表現されていたり、エンディングが何種類かあったり、映画版にはないエンディングがあったり、AKIRAマニアには必修のソフトではあります。

 コロナの外出自粛期間で初めて『AKIRA』を見たという人は、せっかくなのでファミコン版も探してプレイしてみてはいかがでしょう!

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