■ストーリー、そして「絶望のラスダン」とは…

 それでは本題に入ります。

 本作のやり込み具合や自由度の高さはここまでで十二分に伝わったかと思います。そもそも30年前のゲームですからね。その時点で現代でも通じるほどのシステムとゲームバランス(一部バランスブレイカーすぎるバグも……)を成立させていた時点でとんでもない作品であることがうかがい知れます。

 本作の主人公4人は田舎町に住む孤児で、長老に育てられていました。

 ある日、大きな地震の影響でできた洞窟に入ってみると最奥で風のクリスタルと遭遇し、「光の戦士」としての啓示を受けます。これが世界を救う旅に出るきっかけでした。4人は自分たちが住んでいる浮遊大陸から世界に飛び立つため飛空艇に乗り、自分たちの使命を果たすための冒険へと旅立つのでした。

 冒頭はこんな感じです。

 かなり唐突ではありますが、RPGの始まりはこれくらい壮大でわけ分からないくらいがちょうどよい気もしますね。

 フィールド曲の『悠久の風』も最高です。ファミコン音源にも関わらず「シリーズ最高のBGMだ」とする人も多いほどで、かく言う私もフィールドBGMの中では一番好きな楽曲です。

NHK「全FF大投票」音楽部門で16位となった「悠久の風」が流れるMAP画面

 また、いきなり飛空艇に乗れるというのもなかなかクールな演出です。飛空艇に関してはその後もとんでもないスピードで移動するノーチラスという飛空艇も登場するので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。たぶんファミコン史上最も速いです。

 さてそんな壮大でワクワクするスタートを切る本作ですが、とてつもないフィナーレが待っているのです。それがここまで何度か登場している「絶望のラストダンジョン」の存在です。

 未プレイの方は「どんな絶望なんだろうか?」と思う方もいらっしゃるでしょうし、「いや、ラスダンなんだから絶望的なほうが燃えるっしょ!」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、既プレイヤーからすると「その話はもう思い出すからやめてくれ……」と思うほどのトラウマ案件の1つでもあります。

 まず本作のラストダンジョンは超絶長めのダンジョン2部構成となっているだけでなく、怒涛のボスラッシュもあります。このボスがまあ強い。そして、ある仕様を理解していないとラスボスにまったく歯が立たないという仕掛けまで存在しています。

 ここまでであればそういったダンジョンも他のゲームには多くあるでしょう。2020年の現在で言えばなおさらです。

 ところが本作の「絶望」は一味違います。その激烈な難易度に拍車をかけるある仕様があるのです。

 そう、それは「まさかのセーブポイント0個」です。

 これはネタバレしてもよい、と判断して書いているのですが、私は初めてプレイしたとき4時間ほどかけてラスボスまでたどり着き、そしてボコられました。その後、またラストダンジョンの入り口から始めてラスボスまでいかなければならないという絶望に耐えられず、当時の僕はクリアをあきらめカスタムロボをやりました。面白かったです。

 さらに言えば、この長時間に及ぶノーセーブダンジョン攻略のせいで、学校から帰ってきて即プレイしたのにもかかわらず、晩ご飯までに間に合わなかったため泣く泣くリセットさせられてしまう子どもが続出したという伝説もあります。それだけ凶悪な仕様でした。

 噂によるとこの仕様は、デバッガーの方が「ラストダンジョン、セーブポイントがあったんで余裕でした」といった旨の発言をしたことがプロデューサーの坂口博信氏の逆鱗に触れたためだそう。なんてことしてくれたんだ……まったく……。

 ちなみにDSリメイク版などでもセーブポイントこそないものの、中断セーブ機能があるものも増えたので今からプレイする人はそちらをオススメします。無理にFC版をクリアして猛者ぶる必要もないです。セーブさえできれば、地道にコツコツ敵を倒して、ケチらずエリクサーを使いながら進んでいけば割とあっさりクリアして「余裕でした」なんてこともできるかもしれませんよ。

BGMがひたすらかっこいい「FF3」ラストダンジョン

 あとこればっかりはネタバレできませんが、ラスボスに挑む前に見ることができるとあるイベントもなかなか熱いです。これまでのみんなの思いが一つになっていくシーン、ここはぜひ見てほしいです。「これは負けられん……!」とそのこぶしを強く握り、最後の戦いに赴くこととなるでしょう。

 だからこそ、ボコボコにされたときの喪失感たるやハンパじゃありません。それなりに準備をしてから挑みましょう。

 まるで脅し文句のような締めになってしまいましたが、いかがだったでしょうか? 少しでも『FF3』に興味を持っていただけたら嬉しいです。

 全ジョブの熟練度を上げる、ステータスの成長を見る、といったやり込み要素もありつつ、以降のFFシリーズ作品の礎となるようなシステムが多く取り入れられたシリーズ初のミリオンヒットタイトル。未プレイの方はこの機会にぜひ遊んでみてはいかがでしょうか。

 多少、難しいですし、ラスボスはそりゃもう絶望的に強いですが「そんなものは欠点とは呼ばせない!」という意気込みすら聞こえてくるほどの名作です。本作の面白さの前にはそんな欠点も「気にはなるけど気にならない程度」のもんです。

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