■FFの基礎を築く新システム

FC版「FF3」より

 本作の主人公は4人の少年たちで、名前もプレイヤーが任意でつけることになります(DSリメイク版では男3女1の構成になり、名前も与えられました)。 続編である『FF4』に比べると個性がないとも言えますが、裏を返せば「白紙のほうがプレイヤー好みに描ける」というメリットでもありました。

『FF3』にはシリーズ初となる「ジョブチェンジシステム」が採用されました。「たまねぎ剣士」から始まり、ストーリーが進むにつれて数多くのジョブを入手していき、その都度ジョブを変更させながらキャラクターを育成していく、というシステムはやりごたえバツグンでした。

 このシステムの最大の特徴は、任意のタイミングでいつでも(一部例外あり)ジョブを変更できるという点でした。当時のジョブチェンジ・転職と言えば、特定の場所でしかできなかったり、転職後にレベル・ステータスが下がったりするため、ある程度の計画をたてながら行うもので、1キャラで2回3回と変更することはほとんどありませんでした。

 しかし、本作ではジョブチェンジ後にもレベルはそのまま引き継がれ、前職の熟練度も下がらず、能力もレベルに合わせて転職後のジョブの数値になるという仕組みであるため、ボス戦で苦戦するようであればその場で適宜ジョブを入れ替えて対策、なんてこともできました。このシステムと「4人の少年」という設定は非常にゲーム性を高めてくれました。

竜騎士や忍者などおなじみのジョブも3から。

 引き合いに出して申し訳ありませんが、たとえば『ドラゴンクエスト6』のハッサンを見たときに「こいつをヒーラー役にするぞ~」とか「よし、魔法使いとして育てよう!」とは思わないですよね。そのゴリゴリな見た目やステータス値から多くの人が「戦士」や「武闘家」の職に就けたのではないかなと思います。

 その点、『FF3』はいわば4人に個性や差がないため、プレイヤー自身がそのキャラクターの個性を彩っていくことになるのです。

 これによって、無個性だった彼らにも少しずつ違いが生まれ、自らが名付けた4人が力を合わせて難敵を打ち倒していく様を見ているうちに、どんどん引きつけられていきます。この相乗効果がとても素晴らしいです。

 ちなみにジョブごとに装備できるものが異なるため、ボス戦前に転職するつもりで来たけどいざ転職したら装備できるものがない! なんてこともしばしばあるので、プレイ時はご注意ください。

 あともう一点注意していただきたいのが、本作の「逃げにくさ」です。

 本作はとにかく「逃げる」の成功率が低く、さらに逃げるのコマンドを入力した場合にパーティ全員の防御力が大幅に下がり、敵からのダメージが激増するという仕様になっています。

 呪文の使用回数が限られている序盤の戦闘はなかなか厳しいですが、鍛えて育成した後いったん戻り、そのあとでボスに挑む、くらいの慎重さを心がければ問題はないでしょう。

 本作のボスはかなり手ごわいですが、冒険を進めるごとに手に入るジョブの熟練度をしっかりと上げてパーティで対策すれば問題なく倒せるといういわば「ジョブチェンジ前提」のゲームバランスとなっているのもミソで、スムーズにゲームを進めるにはジョブチェンジが必須であることを「強敵の存在」によって教えてくれるので、イヤでもジョブチェンジの楽しさを味わうことになるでしょう。(おおネズミにボコられて味わってください)

 また、後のシリーズではおなじみとなる「召喚魔法・召喚獣」が初登場したのも本作でした。イフリートにシヴァ、バハムートなども本作が初登場です。召喚獣マニアで本作未プレイの方は彼らの初々しい姿をこの機会に拝んでみてはいかがでしょうか。

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